先日、4/9(火)渋谷クアトロで開催されるセッションイベント「HOBO CONNECTION 2013 ~HOBO SPECIAL~」のリハーサルで、チャボさん(仲井戸麗市)と久し振りに再会しました。
スタジオ入りしたチャボさんは、オレの顔を見るなり「お~、リクオ!久し振り~!」と言いながら近づいて、やさしく肩をハグしてくれました。この一連の流れがとても自然で、「チャボさん、やっぱりかっこいいし、優しいなあ」って思いました。
チャボさんは、オレにとって清志郎さん以上に身近に感じるアイドルでした。清志郎さんは若い頃から確信に満ちていて、どこか完成されたイメージがあった
のですが、チャボさんはさまざまな逡巡を経て次第に確信に近づいてゆくような、少しずつ成長してゆくようなイメージがありました。そのイメージに自身を重
ね合わせていたんだと思います。
チャボさん初のソロアルバム「The
仲井戸麗市ブック」を、学生時代に繰り返し聴いていました。表面的にはカッコつけていても、すごく繊細で正直、ナイーブさが伝わる作品でした。アルバムを
聴く度に、どこか甘酸っぱい、胸を締め付けられるような思いにかられたのは、とっくに過ぎ去ったティーンエージャーの頃のときめきと「少年の眼差し」を、
チャボさんが大切に抱え続けていたからだと思います。
チャボさんは、いろんな音楽や人や場所に憧れ続けながらも、憧れそのものにはなれない、たどりつけないことを自覚して、自分がいる場所からの表現を探ろ
うとしているように感じました。チャボさんの音楽と表現に向かう姿勢が、自作曲を歌い始めようとしていた当時の自分の背中を押してくれた気がします。
チャボさんとはじめて共演させてもらったのは、今から23年前、自分がCDデビュー直前の時期でした。今はなき渋谷のジャンジャンでの友部さんのライブ
にチャボさんがゲストで呼ばれた時、自分も鍵盤奏者として参加させてもらったんです。この時のライブを清志郎さんが観に来ていたことが、自分が清志郎さん
のサポートをしばらくやらせてもらうきっかけになりました。
初対面したチャボさんは想像した通りの人でした。それは、清志郎さんと付き合わせてもらうようになったときにも感じたことでした。2人の音楽を聴き続けることで、自分は既に2人に出会っていたのです。
聞きたいことがたくさんあって、ライブの打ち上げでチャボさんにいろんな質問をしました。打ち上げの席にファンが1人紛れ込んだようなものです。「チャ
ボさんのあの歌のあの歌詞のフレーズは、あの曲のあの歌詞のフレーズのオマージュじゃないですか」といった質問に、チャボさんは嫌な顔1つせず、実に丁寧
に答えてくれました。で、その答が、やっぱりこちらの予想通りの答だったりして、2人の会話が弾み、すごく嬉しかったのを覚えてます。今思うと、場をわき
まえない自分の態度を恥ずかしくも思いますが、いい想い出です。
それからチャボさんの自宅住所を教えてもらって、すぐに手紙を出したら、すぐに返事が返ってきました。それが嬉しくって、また手紙を書いたら、またすぐ
に返事が返ってきました。さすがに、それ以上手紙を出すのはやめておきました。チャボさんって、そういう人なんです。
自分は、CDデビュー前後に、憧れの存在だったチャボさんと清志郎さんに対面することができたのですが、デビューして数年が過ぎ、音楽活動が煮詰まって
ゆくにつれ、次第に2人の存在を自分の中から遠ざけるようになりました。その内、2人の音楽をめったに聴かなくなくなりました。このへんの感情を説明する
のは、難しいです。「憧れ」や「ナイーブ」や「過去」から距離を置こうとしていた自分がいたことは確かです。大切なものだからこそ、やわらかい場所がしめ
つけられて、蓋をしてしまいたくなる時期があるのだと思います。
キャリアを重ねて嬉しく思うことの1つは、さまざまな再会を果たすことができるようになったことです。それは、再会を受け入れる心の準備が、次第に自分
の中で整ったということでもあります。そうなると、かたくなだった頃の自分が不思議に思えてきたりします。人はほんの少しずつ変わってゆくのだと思いま
す。
先日のチャボさんらとのリハーサルは、ほんとワクワクしっぱなしでした。リハサールに参加したすべてのミュージシャンが10代に戻ったような笑顔で音を
交わし合いました。皆と一緒に音を奏でているこの瞬間が最高の宝物のように感じられました。本番のステージでなかろうと、どんな時でも、音を交わし合う一
瞬一瞬が一期一会なんだということを実感しました。
ギターを弾き歌うチャボさんの眼差しが、とても印象に残りました。それは、オレがチャボさんと出会った頃から変わらない「少年の眼差し」でした。自分の中の、過去と現在が繋がってゆくようでした。
4/9(火)「HOBO CONNECTION 2013 ~HOBO SPECIAL~」渋谷クアトロ公演はオレにとってだけでなく、多分参加してくれた皆にとって、特別な夜になると思います。ぜひ立ち会って下さい。
ー2013年4月7日(日)
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