2022年10月30日日曜日

ジェリー・リー・ルイス追悼

もう30年前のこと。日清パワーステーションでのワンマンライブで、ジェリー・リー・ルイスの真似をしてグランドピアノの上に乗って、腰を振って踊ったら、ライブ後に日清の事務所に呼び出されて、えらく怒られた。学生の頃、職員室に呼び出されて嫌な先生から説教されてる時みたいだと思った。


日清スタッフの怒りはおさまらず、決まっていた次のブッキングもキャンセルされてしまった。自分の不貞腐れた態度が火に油を注いだのかも知れない。
当時は「ジェリーと同じパフォーマンスをしただけやのに」と思って、全然反省しなかったけれど、今振り返れば、せっかく舞台を用意してくれた事務所やイベンターさん、レコード会社のスタッフをがっかりさせて申し訳なかったなとは思う。

ジェリー・リー・ルイスの存在を知らなければ、自分のピアノスタイルは今とは少し違ったものになっていた。定番の「ミラクルマン」という曲を書くこともなかった。

ピアノがこんなにワイルドでヤバくてカッコイイことを、ピアノが打楽器だってことを、ピアノでロックンロールできるってことを、いや、ピアノブギこそがロックンロールの基本なんだってことを、教えてくれたのがジェリーだった。

この写真みたいに足でピアノを弾きたいと今も思う。また怒られるかな。
ジェリー・リー・ルイスは自分に新しい価値観を与えてくれた。それは、自分の中である程度血肉化されたと思う。
でも、そのOUTRAGEOUS(常識外)なありようは、いつまでも届きようのない憧れのままだ。

ジェリーありがとう。
これからもずっとあなたは、オレの中に、そして世界中のたくさんの人の中に存在し続けます。

ー 2022年10月30日(日)

2022年10月6日木曜日

現状に向き合う ー 地方の小規模店やツアー・ミュージシャンの現状、「一乗寺フェス」のことなど

 今年の春以降は、数だけで言えばコロナ禍以前と同じくらいの数のツアーをこなしている。
社会の空気がウイズコロナにシフトしていることもあり、コロナの影響でライブが中止になったり延期になる機会は減った。
ただ、8月末に自分がコロナに感染して発症、隔離療養を余儀なくされ、ライブを2本飛ばすことになってしまった。
症状に個人差がかなりあるようだけれど、自分の場合、感染してすぐに下熱したと思ったら再び発熱、意外に症状が長引き、味覚障害が出たり、体重が一気に3キロ減ったりしたこともあって、「コロナは風邪やインフルエンザよりかなり厄介だ」と実感した。

今は後遺症もなくすっかり元気になってツアーに復帰したけれど(ただし、後遺症が長く残る人の話もよく聞きます)、地方のツアー先で聞こえてきたり、目にするのは、 ライブスポットや小規模飲食店の実に厳しい現状だ。
東京などの都市部に比べると人の戻りは明らかに遅い。特に40代、50代以上が夜の街に出てこなくなったとの話をよく耳にする。実際に、各地を回っていて、地方の繁華街はコロナ前以上に閑散としている印象だ。
地方都市の夜の繁華街で目立つのは、連んだ若者達の路上飲みだ。コロナ禍で身についた習慣なのだろう。
夜の飲食店は、時短が解かれた後も、日付が変わる前の早くに閉店する店が増えた。開けていてもお客さんが来ないのだ。

今は補助金による援助もなく、さらに、急激な円安やプーチン政権のウクライナ侵攻などがもたらした物価高の影響がお店を直撃し始めている。
「今年はどうにかやりくりできたとしても、来年を乗り切れるかどうか」という話も複数のお店から聞かされた。
ツアーに復帰して各地の現状を目の当たりにすることで、こうした小規模店と自分達のようなフリーのツアーミュージシャンが、最も早くに、そして最も長くコロナの影響を受けてきたことを、あらためて実感している。

ツアーミュージシャンはツアーに復帰したとは言え、どの会場も限定人数でマスク着用、場所によってはマスク着用でも大声禁止など、今も制約がある中でのライブが続いている。動員も厳しい。
知り合いミュージシャンやお世話になっているお店のマスターらと情報交換したりすると、返ってくるのは、自分と同じような立場のツアーミュージシャン達の想像以上に厳しい動員の現状だ。正直、「自分だけじゃないのか」とホッとする気持ちがあるのと同時に、こうしたライブ文化そのものが廃れていくんじゃないかとの危機感を覚える。

多分、自分の場合は、周りとの連携によってコロナ禍でも積極的な音楽活動を続けたことで、まだ影響が抑えられている方なのだろう。それでも、コロナ禍を挟んで、3年、4年と戻ることの出来ていない町も多く、とにかくお店や地域によって動員の格差が極端になった。一度途切れたものを復活させるのは大変なのだ。
ただ、足を運んでくれるお客さん一人一人の熱量は高い。それぞれのライブの一回性、一期一会感は、コロナ前よりも高まったようにさえ思う。ライブを必要とする人は確実に存在するのだ。

多くのツアーミュージシャンは、SNSなどを通して現場に復帰した喜びやライブの盛り上がり、感謝を伝えることはしても、厳しい状況を積極的に伝えようとはしない。自分もそうだ。お世話になった主催者やお店の人にも気を使うし、ネガティブな要素を伝えることが、自身の活動の妨げになるとも感じるからだ。
でも、当事者同士が現状を共有して、そういった厳しい状況を伝えてゆくことも必要なんじゃないかと思う。

前回のブログ《京都「一乗寺フェス」と「ザ・西院フェス」に関するリクオからの「お願い」と言うよりは「呼びかけ」》で綴った内容もそういった危機感の表れだ。https://rikuonet.blogspot.com/2022/09/blog-post_29.html
復活した大型フェスは活況を呈しているようだけれど、地方の小規模イベントは事情がかなり違うように思う。しかも、地域密着の地元の人達による街フェスとなると、余計にコロナの影響が尾を引いているように感じる。
自分が暮らす京都左京区一乗寺で10月15日に開催される街フェス「一乗寺フェス」(生ライブ+配信)のクラウドファンディングは支援募集期間があと6日となりながら、支援金がまだ目標金額の半分にも達していない。
コロナ下、自分も微力ながら多くのクラウドファンディングに参加してきたけれど、もう2年前のようには支援金が集まらなくなっている。けれど、厳しい現状は変わっていなかったりする。

今年の「一乗寺フェス」は、公的補助金に頼ることができなかった実情がある。補助金の予算削減、補助対象事業の縮小はもとより、コロナ禍最初の2年間の支えとなった文化庁Arts For the Future2補助金制度(AFF)において、収容人数50名以下の施設が補助対象外となってしまったことが大きい。文化庁のトップがトリクルダウンの発想を取り入れることで、制度の内容が変わってしまったのだ。
その結果、ひとつのイベントとするフェス形式でも各会場ごとの申請が必要なため、収容50名以下の小規模会場が複数連なる「一乗寺フェス」は対象事業外と判断されてしまった。詳細は「一乗寺フェス」クラウドファンディング申し込みページに綴られているので、興味のある方は目を通してもらいたい。

本来は、公的補助金に多くを頼り過ぎるイベントは健全ではないと思うのだけれど、「一乗寺フェス」と「ザ・西院フェス」は、このコロナ禍においては、外部からの支援なしに来年以降の継続が厳しいのが現状だ。
自分は主催の立場ではないけれど、この二つの街フェスに対しては、地元であり常連の出演者ということもあり、思い入れが強い。
「公助」に頼れない現状の中で、自分達の場所を自分達で守り育くんでゆくためにも、「共助」が必要だと思う。

無理ない範囲で「一乗寺フェス」のクラウドファンディングに参加してもらえたら嬉しいです。
自分の暮らす街だけでなく、各地方の街角で音楽が鳴り響き続けることを願ってます。そんな町同士が繋がり、情報交換し合い、助け合い、互いに盛り上がっていけたらいいなあと思うのです。よろしくお願いします。

■「一乗寺フェス」クラウドファンディング申し込み(支援募集は10月12日午後11:00まで)

「一乗寺フェス」サイト

■「ザ・西院フェス」サイト 

ー 2022年10月6日(木)