AIの急激な進化と浸透を目の当たりにして、人間だからこそ担える領域について考えさせられている。
音楽の現場においてもAIの進出・浸透は著しい。
制作現場では、レコーディングの最終工程であるマスタリング作業をAIが行ったり、企業用広告・YouTube動画・ゲームのBGMなどでAI生成音楽が使用されたりと、既にAIが補助を超えて人間の役割を代替し始めている。
もちろん、ライブやコンサートの現場にもAIは進出している。
演奏においては既に「AIバンド」や「AI DJ」が実験段階で存在するそうだし、演出・ステージプロダクションにおいても、AIが観客の反応や曲調に合わせて照明・映像・舞台装置を変化させる演出の自動化が導入され始めていて、それらは近い将来さらに進化・普及してゆくに違いない。
初音ミクのようなバーチャルアーティストやABBAのホログラム公演のように、そこに人間が実在しないコンサートやライブが既に成立して観客を集めているし、AIで生成された“架空のアーティスト”がステージに立ち、観客とコミュニケーションすることも技術的には可能な段階にきているそうだ。
ちなみに、この文章もChatGPTのサポートを受けている。例えば、音楽の現場にAIがどのような形で進出しているのかをChatGPTは実にわかりやすく具体的に教えてくれた。上記の文章の具体例はChatGPTからの情報を参考にしている。
文章を書き進める中で、ChatGPTにこんな問いを投げかけてみた。
「将来において、AIがライブステージにおける人間の役割を代替する可能性はありますか?」
この問いに対してもChatGPTはいくつもの事例を上げながら実に丁寧な返答をくれた。その上でChatGPTが導き出した結論は以下だった。
「ライブは“AI主導型”と“人間主導型”が並立する時代になると考えられます。」
自分が続けているライブ活動はもちろん“人間主導型”。
“人間主導型”のライブ現場では、”不確定要素”を受け入れながら双方向性・偶発性・即興性を活かしてゆく対応がさらに重要になってゆくと思う。お客さんのリアクションや会場の響き・その日の自身の心持ちや体調によって演奏のニュアンスや選曲・MCを変えたり、機材トラブルやミスタッチ・歌詞忘れなどの思いがけないハプニングをライブの物語の一部としてポジティブに取り込んでゆく、そういった対応はAIには難しいだろう。
AIと共存してゆく時代においては、自身の体験や人柄をステージやクリエイティブに生かすことがますます大切になってゆくように思う。そこはまだ人格を持たないAIが踏み込めない人間ならではの領域だろう。
その上での重要なキーワードは”不完全力”だと思う。自信が(あるいは人間そのものが)完璧ではなく不完全であることを受け入れ他力を取り入れることで化学反応・相互作用を生み出す力を自分はそう呼ぶことにした。
”不完全力”を高めるためには取り繕わず正直であること、自身の姿や状況を受け入れて視野を広げて柔軟に対応する姿勢が大切になる。
そうやって身についた”不完全力”が、AIの「完璧さ」では演出できない演出を超えたドラマや一期一会を生み出してゆく。この考えは自分の積み重ねた体験に依拠するところが大きい。
現時点ではAIが自分の音楽活動に極端な変化をもたらすまでには及んでいないけれど、今後その影響はますます大きくなってゆくだろう。
海外では「近いうちに人間並みの知能を持つAIが登場してAI自身がAIを進化させて人間以上の知能を持つことが可能になり、ここ数年のうちに人間の仕事のあり方や社会の仕組み・生き方を劇的に変えてしまう」といった内容の論文が話題になっているそうだ。AIの進化は自分の想像をとっくに超えている。
人間はAIを使いこなし共に進化することができるのか?あるいはAIの意思決定に依存するような存在に成り下がってしまうのか?AIがもたらす権力集中・民主主義の危機、経済・教育格差の拡大もこれから大きな問題になってゆくのだろう。
この止まらない進化の加速に、果たして人間はどこまで対応できるのだろう?考えるほどに楽観できる状況ではないように思える。なんか知らん間にえらい時代になってきた感じ。
まあ、悲観も楽観もし過ぎず、柔軟にAIとの共存を意識しつつ”不完全力”を高めて、他者との関係性の中でこれからも面白おかしくやってゆけたらと思う。
ー 2025年9月1日(月)