2018年9月14日金曜日

何をあきらめて、何をあきらめていないのか - 打ち上げの席でケーヤンの話を聞いて考えたこと

8月後半から関西と山陰地区9ヶ所を回ったケーヤン(ウルフルケイスケ)との6年振りの2人ツアーは、どの公演も盛況で、ライブ後半では、お客さんが総立ちになるのが常だった。これまでのケーヤンとのツアーの中でも、最も弾けたステージのツアーになった気がする。まるで、2人で最小編成のロックバンドをやってるような気分だった。
最近のケーヤンからは、自分が決めたこと、選んだことをやっている開放感と決意みたいなもんを勝手に受け取っている。

ツアー2公演め、奈良公演での打ち上げの席で、ケーヤンがしてくれた話が印象に残っていたので、ブログに残しておくことにした。
その日の打ち上げは、少人数だったこともあり、落ち着いて色んな話ができた気がする。
居酒屋での内々の打ち上げが始まって、それぞれに程よくアルコールが回り始めた頃、どういった話の流れだったのかは思い出せないのだけれど、「あきらめることの大切さ」が話のテーマになった。
ケーヤンは、自分が深く悩んでいた頃、ある尊敬する先輩ギタリスト某さん宅にしばらく居候させてもらっていた時の話を聞かせてくれた。そのときに某さんから「オマエはチャーになるのはあきらめて、チャボさんを目指せ」とアドヴァイスを受けたことが、自分が変わる1つのきっかけになったそうだ。
実は、ケーヤンと自分が再会するきっかけをつくってくれたのも、その先輩ギタリスト某さんなのだ。

今のケーヤンは、「自分ができることをやる」ということに自覚的なんだと思う。それは音楽的な話だけではない。さまざまな経験を経て、自分に合ったやり方、自分がやりたかったこと、自分ができることがはっきりしてきたんだと思う。
今のソロ活動は、ケーヤンが自らの意志で選択した道なのだ。話を聞いていて、「ケーヤンはちゃんといろんなことを前向きにあきらめることができたんだな」と思った。じゃあ、自分はどうなんだろう?

自分が今のような草の根のネットワークに頼ったツアー暮らしをするようになったのは、メジャーレーベルとの契約が切れて、デビュー当時からお世話になっていた事務所からも離れざるを得なくなったことがきっかけになっている。その時点で自分が音楽で食べてゆくための選択肢は、スタジオ仕事やツアーのサポートなどのバックミュージシャンとしてやってゆくか、フロントマンとしてシンガーソングライターとして、ツアーで細かく全国の数十人キャパのお店を回るか、その2択に限られていた。
当時は、サポート仕事も結構やらせてもらっていたのだけれど、この仕事をメインにするには技術が足りないし、もっと意識を変えなきゃ、続けていくことは難しいと自覚していた。自分はそんなに悩むことなく、後者に軸足を置くことにした。

このインディペンデントな立ち位置でのツアー暮らしは、思いの外自分に向いていた。ツアー先々でのダイレクトな反応、さまざまな出会い、日々受け取る実感が、数字に打ちのめされていた自分の心の支えになってくれた。それは、今も変わらない。
それでも、本格的にツアー暮らしにシフトチェンジした当初は、ファンではない人達の前で演奏することに戸惑ったり、空席だらけの客席に落ち込んだり、毎日続く打ち上げが苦痛になったりすることも多かった(今は率先して打ち上がってます)。
ツアーの移動中、旅の空をながめながら、もう全てを投げ出してしまいたいような気持ちになったこともある。
けれど、ツアー暮らしを続けるうちに、人と関わること、ライブすることが以前よりも楽しくて、より好きになっていった。自分は追いつめられて、環境に適応したんだと思う。それと平行するように、自分の音楽性やライブに向かう姿勢も変化していった。

今のケーヤンと自分の活動スタンスは重なる部分が多いけれど、この活動に至るまでのプロセスには違いがある。ケーヤンは、メジャーで成功した上で、自らの意志でこの活動を選んだけれと、自分の場合は自らの意志で選んだとは言い切れない。少ない選択肢の中で自分を適応させることで役割を見つけたというか、役割を与えてもらった気がしている。

長くツアー暮らしを続ける中で、50代半ばを迎え、残された時間を考えるようになり、「このままでいいのかな」との思いがふくらみ始めている。というか、多分、このままではいられないのだろう。
今の自分は、またこれまでと違ったチャプターに入ったような気がしている。今もツアー暮らしは大好きだけれど、このままツアーの「楽しさ」に埋没していいのだろうかとも思うのだ。
いや、本当は楽しいことばかりじゃなくて、ツアー先で、空席だらけの客席に自尊心を傷つけられ、やるせなく悔しい思いをすることが今だってある。その悔しさに蓋をしていいのかなと思う。
つまり、自分はまだちゃんとあきらめきれていないのだろう。

自分が何を感じて、何が好きで、何がやりたくて、何を求めているのか、正直に自分の心の底に降りてみようと思う。
ケーヤンが吹っ切れて見えるのは、正直にやろうとしているからだと思う。自分も、いつでもそうありたい。この時期に、2人でツアーを回れたことは、自分にとってはとてもタイムリーだった。
ー2018年9月14日


10年振りにリリースしたシングルCDの1曲目「永遠のロックンロール」でケーヤンが素晴しいロックギターを弾いてくれてます。聴いてもらえたら嬉しいです。オレなりの音楽讃歌です。このシングル曲のミュージックビデオ、今のバンドライブの空気が伝わると思います。ケーヤンもオレも、みんないい笑顔。

リクオ『永遠のロックンロール』Music Video
https://youtu.be/SY9RnyDZVWI

リクオ『海さくら』Music Video
https://youtu.be/dQ5bYwULpA0

ケーヤンの会場限定発売アナログシングル「ミュージック/アホみたい」にピアノとコーラスで参加しました。アナログレコードにぴったりのご機嫌なバンドサウンド。名曲「ミュージック」がバンドサウンドでリリースされるのも嬉しいですね。ぜひ、会場で手に入れて下さい。https://www.ulfulkeisuke.com/item/

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