監督・田口トモロヲ、脚本・宮藤官九郎による映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』を観てきた。
1978年の東京を舞台に、日本のパンク・ロックの礎を築いた若者たちの姿を描いた青春群像劇で、愛情と思い入れが細部にまで行き届いた映画だった。
自分が中学3年生から高校生だった頃の時代の話だけれど、遠藤ミチロウさん、エスケンさんら、後に自分も交流を持った人たちが描かれていたり、西部講堂や新宿ロフトなど、自分も立ったことのあるステージや思い入れのある場所が舞台になっていることもあって、胸がキュッとしたり、心のざわつきを感じながら映画を観た。
映画の最後にJAGATARAの「もうがまんできない」が流れ、出演者がそれぞれ歌い回していくシーンにはグッときた。その中でも、路上でアコースティックギターの弾き語りをしている未知ヲ(遠藤ミチロウ)が映るシーンは不意を突かれた感じで、一気に涙腺が緩んでしまった。
スターリンで一世を風靡した後、’90年代半ば以降は主にシンガーソングライターとして全国を巡り、路上と地続きの場所で歌い続けたミチロウさんの姿を描いてくれたことに胸を打たれたし、製作者の深いリスペクトを感じた。
それにしても、今や日本で最も注目を集める役者の一人であり、大河ドラマの主役も務める仲野大賀が、ミチロウさんを演じることになるとは(しかもあそこまで体を張って)。不思議な気もしたけれど、素晴らしいことだと思った。
実際のミチロウさんとのギャップは感じたけれど、映画を見終えてみると、それで良かったのではないかと思えた。
ゼルダのチホさん役の吉岡里帆もよかったなあ。
配役からも、この映画が一般に開かれた作品を目指していることが伝わった。
それと、この映画は主役がミュージシャンではなく無名と言えるカメラマン・地引雄一氏だったことも良かった。多くの無名のスタッフが、シーンに対してミュージシャンと同等の貢献を果たしてきたことは間違いないのだから。
この映画は、東京ロッカーズというムーブメントと、そこに関わったバンドの存在を今の世に知らしめる大きなきっかけになるのだろう。それは素晴らしいことだし、同業者としては、このような形でシーンの功績が残されることに、少し羨ましさも感じた。
そのうち、’70年代にムーブメントを起こした関西ブルースや関西フォーク、’80年代後半からのバンドブーム、'90年代前半の渋谷系や日本のクラブ・ムーブメントにスポットを当てた映画もできれば面白い。
友部正人さんの役は吉沢亮、大槻ケンジ君は渡辺大知君でどうだろう?
自分はこれまで、どの音楽シーンに属することもなかったけれど、いろんなムーブメントに触発されることで、ここまでやってこれたのだと思う。
その根底にある共通の姿勢が「Do it yourself」であることを、映画を通してあらためて確認することができた。
あと、権力や権威との距離感も、自分はどちらかというとこっち側だと思った。
でも、ステージに向かう姿勢には違いも感じた。東京ロッカーズの人たちは、手拍子やコール&レスポンスを求めたりはしなかっただろうし。歳を重ねたせいもあって、今の自分のパフォーマンスはあんなふうにはトンガっていない。
東京ロッカーズというムーブメントは一瞬の輝きだからこそ美しく、かっこよかった。自分が今やっていることは、くたばるまでやり続けることだ。
こんな映画が、ミニシアターではなくMOVIX京都という大きな映画館で観られる日が来るとは思わなかった。
この時期にこの映画を観られて良かった。
制作に関わった人たちに、心からのリスペクトを。
ー 2026年4月17日(金)
