各地の公共図書館で指定管理者として業務を請け負っている民間企業、図書館流通センター(TRC)が、レンタル大手TSUTAYA(ツタヤ)を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)との図書館事業についての関係を解消する考えを表明した。最近、TSUTAYA管理の図書館に関する情報を追いかけていた自分にとって、タイムリーなニュースだった。
http://www.47news.jp/CN/201510/CN2015102601002183.html
図書館が民間企業に管理を委託するようになったのは、その運営に行き詰ったからだ。結果、TSUTAYA管理となった図書館は、集客増加に成功する一方で、貴重資料の破棄や選書、本の分類のやり方などが問題視されている。
そういった状況の中、愛知県小牧市のように、TSUTAYA管理の市立図書館建設計画に対して、市民の間に「図書館の質を落としかねない」などと反対論が広がることで、住民投票が行われ、反対多数の結果が出て、計画見直しを迫られる例も出始めている。
自分がこの問題に注視するようになり始めたのは、先月、自分が暮らす藤沢にできた書店とカフェを中心とした文化複合施設、湘南T-SITEに初めて足を運んだことが、一つのきっかけになっている。
湘南T-SITEは、2018年をめどに約1000戸の住宅が建ち、およそ3500人の住民が増加する計画Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)のランドマークとして、昨年年末にオープン。用地を提供したパナソニック側が、地域住民のカフェと書店が欲しいという要望に則して、代官山の蔦屋書店(代官山T-SITE)の存在をキャッチしてアプローチしたことでオープンが実現した。
http://real.tsite.jp/shonan/about/
自分がT-SITEに足を運んだ時は、平日に関わらず、施設はかなりのにぎわいだった。どの店舗も、おしゃれでスマート。居心地は悪くなかった。カフェと書店がつながっているのが嬉しいし、長く時間を過ごせる場所だと思った。もっと近所にあれば、頻繁に通うかもしれない。
でも、同時に違和感も残った。その感覚を、まだうまく言語化できずにいるのだけれど、本という存在がオシャレな雑貨として扱われていたことが印象的だった。それは、今後、書籍と書店が生き残ってゆくための一つの手段なのだろう。
その様を見て、音楽に携わる自分にとっても他人事ではないと感じた。今後、CDやアナログレコードも、グッズや雑貨の一つとしての要素をより強めてゆくのだろうと思う。
T-SITEの書店で、困ったことがあった。本の分類が独自でよくわからず、ほしい本がなかなか見つからないのだ。そこで自分が感じたのは、「本の内容は、あまり重視されていないのではないか」という疑問だった。売るための整理手段が優先されるのは、書店としては当然のことなのだろうけれど、本好きに対する配慮がもう少しほしい気がした。この本の分類に関しては、TSUTAYA管理の図書館でも問題視されている。
TSUTAYAは図書館の管理において、本来、図書館が最も果たすべき「知の集積場所」としての機能よりも、別のものを優先させようとしたのだろう。その姿勢には疑問を感じるけれど、図書館にカフェがあるのは嬉しいし(スターバックスでなくてもいいけれど)、そんな図書館が近所にあれば、頻繁に通いそうだ。
自分が感じた違和感の正体の一つは、本やCD、レコード、そのものが本来持っている価値や思い入れがないがしろにされてゆくことに対するものだと思う。でも、それだけではない。
便利や快適、オシャレやスマートを求める一方で、無自覚にそういった方向へ向かうことへの警戒心とか危機感が自分の中で大きくなっている気がする。湘南T-SITEのあり方や、民間企業が図書館を管理するというやり方が、何か一つの大きな流れと結びついているように感じて、それを疑問なく受け入れていいのかなと考えてしまうのだ。
それでも、音楽と本とカフェが好きな自分は、T-SITEとTSUTAYA管理の図書館が自宅近所にあれば、違和感を持ちながらも通うのだろう。ただ、それ以外の選択肢が残っていてほしいと思う。
ー2014年10月27日
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