自分にとって2年振りのスタジオ・アルバム「Hello!」が発売となりました(CDとLPレコード同時発売)。
ここまで長い道のりでした。アルバムの最初のレコーディングが去年の1月。その後、スタジオを変えての3月のレコーディング時から、めまいと耳鳴りに悩まされるようになり、ボーカル録りの音程がとれない状況に陥りました。診断の結果は突発性難聴とメニエール症候群とのこと。特に左耳の聴力が落ちていました。
薬で症状をおさえながら、その後のツアースケジュールはだましだましなんとか乗り切りましたが、レコーディングはしばらく中断せざるえなくなりました。その間、レコーディングの方向性についても色々と悩みました。
耳の回復を待って、9月から再開したレコーディングでは、吉祥寺のGOK SOUNDを使用させてもらい、それまでのプロトゥールスを使ったDAW(Digital Audio Workstation)録音からSSLのコンソールと24トラックのスチューダーを使ったアナログ録音に切り替えました。これで、レコーディングの方向性がはっきりと定まりました。スタジオの選択に関しては、カーネーションの直枝さんに相談させてもらったことがきっかけで、GOK SOUNDを使わせてもらうことになりました。
アナログレコーディングに切り替えることで、それまで録音していた曲も録り直すことにしました。制作費のことを考えると、かなり思い切った判断でした。
この時点で、原盤制作費がインディー・レーベルで負担できる額を超えてしまうことは、はっきりしていました。自分が制作費を負担して原盤権を持ち、インディー・レーベルでリリースした場合、今度はリクープラインがあまりにも高くなり、回収が困難になります。
今回、自主レーベル「Hello Records」を立ち上げてのリリースを決めたのは、インディーズとしては、制作費がかかり過ぎてしまったことが一つのきっかけになりました。制作費のことやLPレコードの発売も含めて、自身のレーベルだからこそ、リスクをしょって無理ができたわけです。前作までお世話になっていたレーベル、ホームワーク・レコードには、ミュージシャン側の立場にたった良心的な対応をしてもらい、感謝してます。
レーベルを立ち上げてみて、「レーベルやるのって大変やな」というのが今のところの実感です。自分を含めたスタッフ2人の弱小レーベルとして、手探り奮闘中です。
演奏者の表情や空気感、ライブ感の伝わるサウンドを目指して、録音のベーシックは、顔を突き合わせての同時演奏、「一発録り」にこだわりました。技術とハートを兼ね備えた素晴しいレコーディングメンバーの存在なくして、今回の作品は成り立ちませんでした。
レコーディングに参加してくれたメンバー、特にHOBO HOUSE BANDとして自分のライブにも参加してくれている寺さん(寺岡信芳:ベース)、椎野さん(椎野恭一:ドラム)、コースケ(宮下広輔:ペダルスティール)、歩ちゃん(橋本歩:チェロ)、阿部美緒(ヴァイオリン)には、スタジオを変えて繰り返される録り直しにも、根気よく付き合ってもらいました。
オルガンの小林創くん、ギターの佐藤克彦さん、コーラスの真城めぐみさん、サックスの梅津和時さん、トランペットの黄啓傑くんも、この作品に欠かせない存在です。「Hello!」の冒頭を飾るナンバー「僕らのパレード」を共作してくれた丸谷マナブくんは、自分のポップの扉を新たに開いてくれました。
GOK SOUNDのオーナーでもあるエンジニアの近藤さんには、録りとミックスで、ひつこく付き合ってもらいました。お互いのこだわりをぶつけ合うことで、作品のクオリティーを高めることができたと思います。
GOKを使用するまでのレコーディングに付き合ってくれたエンジニアのモーキー(谷澤一輝)は、素晴しいセンスを持った、オレのよき理解者です。「永遠のダウンタウンボーイ」のミックスは彼によるものです。
マスタリングは前作の「HOBO HOUSE」に続いてビクター・マスタリング・センターの小鐵 徹さんにお願いしました。まさに匠の技。音量、音圧稼ぎに走らず、あくまでも空気感、響き、奥行きを大切にした柔らかい音作りは、作品の方向性にぴったりとはまりました。
パッケージ作品としてのアルバム・ジャケットの重要性を増々強く感じている中で、今回、小山雅嗣さんにデザインと撮影をお願いしたのは大正解でした。雅嗣さんによるアートワークが作品全体のイメージに与えている影響は大きいと思います。
渋谷のスクランブル交差点と日比谷公園で行われた撮影ロケのアシスタントは、雅嗣さんの弟の小山琢也くん。彼は「リクオwith HOBO HOUSE BAND Live at 伝承ホール」でジャケットに使われた写真のカメラマンです。
ジャケット内ブックレットのライナー・ノーツと曲解説は、前作のライブ盤「リクオwith HOBO HOUSE BAND Live at 伝承ホール」に続いて宮井章裕くんにお願いしました。知識と愛に裏打ちされた、人柄の伝わるステキな文章です。
彼は湘南で洋楽専門のレーベル「サンドフィッシュ・レコード」を主催していて、良質のシンガーソングライター作品をリリースし続けています。昨年サンドフィッシュからリリースされたジョン・リーゲンのアルバム「ストップ・タイム」は、オレの愛聴盤です。
前作のスタジオ・アルバム「HOBO HOUSE」に続いて、今回も出版会社のソニー・ミュージック・パブリッシング(SMP)と出版契約を結ばせてもらいました。SMPの大坂さんと舟田さんには、アルバムの曲作りの段階から色々と相談に乗ってもらいました。舟田さんには、アルバムのA&R的な存在として、制作に関わってもらいました。
「僕らのパレード」の共作者である丸谷君を紹介してくれたのも舟田さんです。大坂さんと舟田さんとの関わりによって今回の作品への流れができました。
「Hello!」は自分名義のソロ作品ではありますが、多くの人との関わりの中で生まれた共同作品です。ポップ・ミュージックとは、多くの才能と情熱の集結によって生まれ得るものだと思います。自分が今回作りたかったのは、まさにポップ・ミュージックとして成り立つ作品でした。
作品の中にはさまざまなオマージュを散りばめました。自分の作品は、これまでのたくさんの記憶、先人から勝手に受け取ったバトンによって成り立っています。「Hello!」を通して、皆さんとさまざまな記憶を共有できることを、「Hello!」というバトンが誰かに受け継がれることを願っています。
この作品を自分の節目にすることで、色んな人達に恩返しができたらと思っています。制作に関わってくれたすべての人達、今、プロモーションに関わってくれているすべての人達に心から感謝します。
そして、「Hello!」を既に受け取ってくれた皆さん、これから受け取ろうとしてくれている皆さん、本当にありがとう。皆さんの心に寄り添う作品になれば嬉しいです。
明日からまたツアーに出て、このアルバムを抱えて、全国を回ります。各地で皆さんに会えることを楽しみにしてます。
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