2025年8月6日水曜日

映画『KNEECAP/ニーキャップ』を観た

 北アイルランド出身のヒップホップ・トリオ・ニーキャップのメンバー自らが演じる半自伝的映画『KNEECAP/ニーキャップ』を観てきた。まずはムチャ面白かった。
音楽・言葉・映像が躍動していて、終始ワクワクしながら観た。アイルランド語によるパンクなラップと物議を醸し続ける3人の言動については、ぜひネットやSNSで検索して確認してもらいたい。

パレスチナへの連帯を公言するニーキャップは、その過激な言動によって、特に北アイルランドの宗主国であるイギリスにおいて激しいバッシングを受けている。最近では、イギリス首相から名指しで非難されたり、フェスから彼らを外そうとする動きがあったり、演奏中に検閲を求める声があがったり、と話題に事欠かない。

映画のパンフレットの中で北アイルランド研究者の尹 慧瑛(ユン ヘヨン)氏が語っていたように、ニーキャップの表現に含まれる暴力性と悪意・享楽性に対して安易に共感を示すことには自分も躊躇を覚えるけれど(映画に痛快さを感じつつも)、そのラップや言動の背景や歴史を無視して彼らを批判することは、問題の本質に蓋をする愚かで抑圧的な行為だと思う。
生々しい怒りややり切れなさの表明なしに社会問題が注目を集めることは難しい。その怒りに対する拒絶や無視が、差別や抑圧の構造の温存につながることを忘れずにいたい。

自分は、彼らとは育ちや背負っている歴史も違うので、目指すところが同じでも、同じ表現方法は取れない。
時と場合によって表現に悪意や暴力性が込められることもありだと思っているけれど、自分自身はその快感や万能感から距離を置くように心掛けている。結局、映画を観て自分のことを考えさせられたり確認した感じ。

自分が知らないだけかもしれないけれど、この映画もニーキャップも、日本ではあんまり話題になっていないようだ。日本でニーキャップを知らない人達がこの映画を観てどんな感想を持つのか気になった。




ー 2025年8月6日(水)

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