2011年5月18日水曜日

5/18(水)「音楽ってすごいな」by中川敬

 この日は、石巻と女川で2回公演。
 まず午後から、避難所になっている石巻市立湊小学校の体育館で演奏。学校に到着したら異臭が鼻をついた。学校の近くにいくつもある水産工場が津波にやら れ、海産物が腐って放つニオイが、異臭の要因らしい。埃も舞っていて、多くの人達がマスクを着用していた。
 目の前で自衛隊の人達がお昼の炊き出しをしている最中に、ライブは始まった。1曲目の「聞け万国の労働者」が始まると、自衛隊の人達が率先して手拍子してくれた。なかなか体験することのできない光景だ。
 3・11以降、避難所でのライブは始めてだったので、やはり最初は手探りの感じ。演奏を楽しんでくれている人もいれば、興味なさげに食事をすませて、演 奏の途中で退席する人もいた。客席最前列で終始にこにこ顔だったおじいちゃんや、手拍子のリズム感がバッチリのおばあちゃん、ライブの後に「ほんとに来て くれてありがとう」と話しかけてくれたおばちゃん等に、こちらが力をもらった感じ。
 次の公演先は石巻から約15キロ離れた女川町。津波の被害の大きさは聞いていたし、テレビやYouTubeで映像も観ていたのだけれど、実際に目にした光景は想像を超えていた。まるで爆撃にあって破壊しつくされた街のように見えた。

 今回、女川町でのライブが実現することになったのは、中川君、克ちゃん等が先月の4月に女川を訪れた際、瓦礫の中に挟まれているターンテーブルを見つけ て、そのことをツイッターでつぶやいたことがきっかけになっている。後に、そのターンテーブルの持ち主が、蒲鉾本舗高政という蒲鉾屋さんの若旦那、高橋君 のものらしいことが判明。同時に、高橋君がソウルフワラーユニオンのファンだったことも判明。こうしてツイッターを通して、高橋君と中川君が繋がり、今回 の女川でのライブが決まったそうだ。
 ただ、高橋君はライブ当日になってもまだ、そのターンテーブルを見つけ出せずにいた。それで、この日、中川君の提案で、本番前に、高橋君等と一緒にターンテーブルを探しに行くことにする。
 そのターンテーブルは、流された高橋君の自宅からは随分離れた海沿いの場所で見つかった。それは、地盤沈下して冠水した水面から顔を出した状態でさらさ れていた。高橋君は、見つけ出したターンテーブルを海水の中から取り出して、しばらく抱きしめ続けた。

 女川総合体育館前でのライブには、老若男女が集まり、笑顔に溢れた、素敵な共鳴空間になった。盛り上がったなあ。
 ライブ後、避難所で暮らす何人もの人達から声をかけられた。皆が感謝の気持ちを伝えてくれて、強く手を握りしめてくれた。熱いものがこみあげてきた。
 ライブ後に中川君がオレのそばに来て、こう言った。
 「音楽ってすごいな」
 自分も同じことを思っていた。
 この日の唯一の心残りは、会場で蒲鉾本舗高政(http://www.takamasa.net/)よりふるまわれた焼きたて蒲鉾が品切れで食べれなかったこと。全国の皆さん、高政の蒲鉾はホント美味しいですよ。

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