2016年6月19日日曜日

実感の積み重ね ー 北海道にてツアー暮らしを振り返る

8日間で北海道6ヶ所を回るツアーから戻ってきたのが月曜日。それからツアーの余韻にひたることなく、日々に負われてもう週末。ライブイベントとプロモーションをかねて訪れた大阪のカフェで一息ついて、このブログを書いている。
北海道ツアー中に、色々感じたり、振り返って考えることが多かったので、忘れないようにまとめておこうと思う。

一言で言えば、充実したツアーだった。やはりアルバム「Hello!」のリリースを受けてのツアーであることが、大きかったのだと思う。お客さんの期待感とこちらの意気込みが、会場の熱量を高め、いつも以上のエネルギー循環を生みだした。
ツアー中、今までずっと自分の作品を聴いてくれていた何人もの人達から、新譜「Hello!」に対する思いを聞かせてもらって、とても勇気づけられた。アルバム各曲に自分自身を重ね合わせて聴いてもらえていることが嬉しかった。
ツアー前は、心身ともに少々疲弊した状態だったのだけれど、北海道入りしてから体調が上向き始めた。北海道の自然にふれ、多くの人達からダイレクトに想いを受け取って、気持ちが前向きになってゆくのを感じた。

ツアー中、少し心の余裕ができたせいで、今から18年前、’98年のツアーで北海道を訪れたときのことを思い返した。今のような年間100本を超えるペースで各地をツアーして回るようになったのは、この年からだ。
デビュー当時からお世話になった事務所を離れたばかりの頃で、スタッフや共演者の帯同なく1人だけで1週間以上の長いツアーを回るのは、このときが初めての体験だった。今回の公演先に含まれていた芦別・ディランと旭川・アーリータイムズとのお付き合いは、この時のツアーから始まった。

そもそも、自分が今のようなツアー暮らしに活動の中心を移行させたのは、必要に迫られてのことだった。メジャーレーベルからリリースし続けたCDが売れず、レコード会社との契約が切れたことで、事務所からの給料がストップし、歩合によるギャラ制に移行するも、それでは食っていけなくなり、どうしようもなくなって事務所を離れたことがきっかけだ。つまりは、食っていくための限られた選択だったのだ。
元々、ライブは好きだったので、ツアー暮らしへの移行は、嫌々というわけではなかったけれど、メジャーデビューしてから約7年で「売れなかった」という事実は、はっきりと挫折だった。18年前の北海道ツアーは、事務所を離れたばかりの不安と売れなかったという挫折を引きづりながらの、自分にとってのリスタートだった。

ツアー中は、いい夜もあれば、寂しい夜もあった。総じて慣れないことが多く、「しんどいツアーやったなあ」という印象が残っている。
ツアーの半ば、初めて訪れた街で1日を過ごし、朝目覚めたら、急に絶望感にさいなまれ、自分でも驚いた。宿泊先を出て、次のツアー先に向かう間も後ろ向きな考えばかりが堂々巡りして、ちっとも前向きになれない。突然、自分のキャラが変わってしまったような感じ。
広くてどんよりした北海道の空を見上げながら、「もう楽になりたいなあ」などと思っている自分を、「こいつ、ちょっとやばいなあ」と割と冷静に心配してるもう1人の自分がいた。こういう鬱的状態に陥るのは初めての体験で、自分がそういう心持ちになることが意外だった。フリーになってから、心身の疲れがたまっていることにも気づかないくらい、ずっと気が張りつめていて、その反動が一気に襲ってきたのだと思う。
けれど、鬱的状態に浸る余裕もなくツアーは続いた。幸い、1人にならなければ、強い落ち込みがやってくることはなかった。その後のツアーも盛り上がったり、落ち込んだり、起伏の激しい毎日が続いた。
始めての土地、初対面の人達、1人だけのツアー、ファンではないお客さんの前でのステージ。そんな中で、自分はさまざまを学んでいった。というか、学ぶしかなかった。
しんどいツアーではあったけれど、当時の体験がその後の自分に及ぼした影響は大きかった。そういった意味で、北海道は、自分のツアー暮らしの原点ともいえる場所だ。

ツアーを重ねるうちに、ライブに対する自分の意識が少しずつ変化していった。独り善がりになってはいけない。力まず視野を広く持つ。ライブの醍醐味はエネルギー循環による化学反応であり、毎回のステージが一期一会。その瞬間にすべてをかける。そのような意識が強まっていった。
それまでは、自分のことを知ってもらいたい、わかってもらいたいという自我が強すぎたのだと気づいた。それよりも、集まってくれた人達と一緒に最高の解放空間をコーディネイトしてゆくことの方が大切で、そこにこそライブの醍醐味を感じるようになった。そういった姿勢の変化によって、毎回のライブがより新鮮に感じられるようになった。
ツアー暮らしに慣れてくると、ツアーが楽しくなってきた。人と出会って、いろんな話を聞かせてもらうことが面白く感じるようになった。各土地の風土の違い、気質の違い、価値観の違い、時間の流れの違いが興味深く感じられ、それらを自然に受け入れられるようになってきた。
人も土地も多様であると実感するようになった。ツアーを重ねることで、五感のバランスが整い、心の風通しが良くなり、自分の中のワイルドネスが解放されてゆく気がした。よく弾き、よく歌い、よく飲み、よく語り、ときに羽目を外し、アホをやらかす日々が続いた。かつでのナイーブな青年キャラはどこかに行ってしまったようだった。

ツアー暮らしは実感の積み重ねだった。その積み重ねが数字に負けそうな自分を救ってくれた。ダイレクトな反応が、自分に自信と確信を与えてくれた。そういった感覚は、今も変わらないなあと、北海道の地でつくづく思った。

自分は気力が続く限りは、今のようなツアー暮らしを続けられたらと思う。ただ、その一方で、今のツアー暮らしに埋没してはいけないとも思う。いい曲を書いて、いい作品をつくり続けたいし、そのことで目に見えない誰かからも評価されたい。本当は、規模の大きいホールでのツアーもやりたい。そのためには数字に向き合う時間もつくろうと思う。今は、そういう時期なんだと思う。
音楽で食ってゆくこと事態が、増々難しくなりつつある世の中だから、いくつになってもトライし続けなければ、現状維持も難しいだろうと自覚している。
広い視野で何事も楽しむ余裕と、色んな人達に支えてもらっている感謝の気持ちを忘れずに、まだまだ元気にもがいてやろうと思う。

ツアーもいよいよバンド編成による5公演を残すのみ。皆さん、お待ちしてますよ。
ー 2016年 6月19日

★〜リクオ・ソロアルバム「Hello!」発売記念ツアー〜
【出演】リクオ with HOBO HOUSE BAND(ドラム:椎野恭一/ベース:寺岡信芳ペダルスティール:宮下広輔)
●6/25(土)長野・ネオンホール 026-237-2719
●6/26(日)富山県高岡市・カフェ・ポローニア 0766-63-3283

★〜リクオ・ソロアルバム「Hello!」発売記念スペシャル・ライブ〜
【出演】リクオ with HOBO HOUSE BAND
Dr.kyOn(キーボード&ギター)/椎野恭一(ドラム)/寺岡信芳(ベース)/宮下広輔(ペダルスティール)/※真城めぐみ(コーラス)/※橋本歩(チェロ)/※阿部美緒(ヴァイオリン) ※東京公演のみ
●7/2(土)名古屋・得三(TOKUZO) 052-733-3709
●7/3(日)大阪・心斎橋JANUS 06-6214-7255
●7/10(日)下北沢・GARDEN 03-3410-3431

■ツアー詳細→ http://www.rikuo.net/live-information/
■「Hello!」特設サイト→ http://www.rikuo.net/hello/
■「僕らのパレード」MV https://youtu.be/Rl5h__LNwRU
■「大阪ビタースイート」MV https://youtu.be/A6-57XGuLoQ

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