大学生の頃、同世代の音楽仲間達とLittleT&Aというロックバンドをやっていた。活動を始めた86年当時の自分は、まだ本格的に歌い始め
る前で、キーボード奏者としての参加だった。京都の拾得や磔磔、今はなき大阪のバーボンハウスなんかで定期的にライブを行い、かなり勢力的に活動していた
のだが、大学卒業後にバンドは解散、それぞれのメンバーが別々の道を歩むことになった。メンバーの中で音楽を生業にしたのは自分だけだった。
数ヶ月前にT&Aのヴォーカルとギター、作詞作曲担当だった外村から自宅に封筒が届いた。その中には当時のバンドの音源をまとめたCDRが3枚
入っていた。その後しばらくしてドラムの片平から連絡があって、“外村からT&Aの一夜限りの復活祭をやりたいとの連絡があり、自分がそのまとめ
役をする”とのこと。片平がまとめ役をするなど、学生時代には考えられなかったこと。人は変わるもんである。
10年前にこの話を持ちかけられた
ら、OKしたかどうかわからない。もしかしたら頑なプライドが邪魔をしたかもしれない。卒業後メンバーそれぞれが、自身のなかに割り切れない思いを抱き続
け、他のメンバー対しても一言ではとても言い切れない複雑な思いを持ち続けていたに違いないのだから、再び皆が集まって音を交わし合うのには、やはり長い
時間が必要だった。
この日久し振りにT&Aのメンバーが大阪に集合して、恐らく20年振りくらいに一緒にスタジオ入りし、音を交わした。
少しの気恥ずかしさは感じつつも、たいした違和感もなくセッションが始まり、その後は20年の歳月がみるみるうちに埋まってゆくような気がした。それぞれがしっかりと準備をしてきたようで、20曲近い楽曲をメンバー全員がほとんど覚えていた。
演奏していて楽しくてしっくりきた。この乗り、やはり自分の育った場所である。
メンバーの中で音楽を生業にしたのは自分だけだけれど、音楽との関係を断ったメンバーは1人もいなかった。この20年の間で誰も楽器を手放さなかった。そ
れぞれが、さまざまな葛藤を経ながら、それぞれのやりかたで音楽との付き合いを続けてきたのだ。だからこそ、一夜で20年の歳月を埋めるようなセッション
が可能だったのだと思う。
時を経て、お互い性格が以前程ややこしくなくなった。前よりも素直になって、互いに気遣いができるようになった気がする。20年前には出せなかった楽器の鳴りや乗りが出せるようにもなった。もちろん、20年の間になくしたものもあるだろう。
自分はこうやって久し振りに皆と音を通じて会話できたことが、ただただ嬉しかった。リハーサルの後、深夜までメンバーと飲んで、語り合った。
Little T&Aの一夜限りの復活ライブは10/23(木)京都 拾得です。
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