2019年7月2日火曜日

逡巡をこえた答 ー 映画「新聞記者」を観て

映画「新聞記者」を観た。
権力とメディアの攻防を描いた、現実とリンクする怖い内容だけれど、娯楽映画として予想以上に楽しめる内容だった。
隅々に映像テクニックの創意工夫がなされていて、若い監督と映像チームの垢抜けたセンスを感じた。
批判に重心を置かず、複数の視点を用意し、考えさせる余白、問いかけを残そうとする姿勢にも共感を覚えた。

監督自身も語っていたけれど、この映画の軸となるテーマの一つは「集団の中の個のありよう」だ。松坂桃李が演じる官僚やシム・ウンギョン演じる新聞記者が組織の中で悩み葛藤する姿は、やり切れなさを感じさせる一方で、希望として自分の目に写った。
空気を読み、自分の属するクラスタとポジショントークに安住することで思考停止と分断が進む社会の中で、悩み葛藤を続ける態度の大切さを今まで以上に感じる。そういったプロセスを経て、逡巡をこえた答を導き出したいと思う。
もし、そうやって得た答の中にも間違いがあれば、その間違いを受け入れるしなやかさと勇気を持ちたい。

映画を見終えた後に、ネット上に掲載された、この映画のエグゼクティブ・プロデューサーである河村光庸氏と藤井道人監督、両者のインタビューを読み比べてみたのだけれど、2人の個性の違いを感じて興味深かった。
河村氏は反権力の意識が強い人で、藤井氏は元々はそういう意識の希薄な人のようだ。この意識の差は、世代の差にもよるのだろう。両者の化学反応によって、この映画は権力批判や告発を超えた人間ドラマとして、人としてのありようを問いかけるような普遍的なテーマを得たように思う。
71歳のプロデューサーの問題意識と32歳の監督のしなやかな感性が、この映画を通して理想的な出会いを果たした意味の大きさを感じる。
このような題材を扱うことに、これまで以上の覚悟が求められる時代になったと思う。その勇気にも敬意を表したい。

観終えた後に無性に語りたくなったし、誰かと語り合いたくなった。左右、世代を超えて観てもらいたい。この映画、ヒットしてほしいなあ。

ー 2019年7月2日(火)

1 件のコメント:

  1. まだ骨のある人たち、表現者がしっかりいるという、嬉しい衝撃を受けたね^ ^ 芸人、まだまだ捨てたもんじゃないね^ ^

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