2010年5月3日月曜日

尾道発宇宙

広島県尾道市 妙宣寺
【サポート】橋本歩(チェロ)/阿部美緒(ヴァイオリン)
【オープニングアクト】KEIKI
 全国を回る中で、尾道は特に魅力を感じる街の一つ。訪れるのは3年振り。 
 この日は、当初はソロで弾き語りする予定だったのだけれど、チェロの歩ちゃんとヴァイオリンの阿部美緒がエアプランツのツアーで大阪に来ていて、この日 がオフであるとが判明、急遽2人を誘って尾道に来てもらうことにする。尾道妙宣寺本堂のあの空間に2人が参加してくれたら絶対にはまるだろうなと思ったの だ。

 この日も快晴。正午過ぎには3人で尾道入り。ライブの主催者で大学時代の軽音部の後輩、多田が駅まで迎えに来てくれて、リハーサルの時間まで尾道の街を山の手中心に案内してくれる。これが実にいい時間だった。
 尾道は大戦中に奇跡的に空襲を逃れたことで、大正、昭和初期からの建物今も多く残されている。だから、街並に風情がある。神社仏閣が多いことも街の景観 が維持される一つの要因になったのだと思う。道が狭くて、坂と路地裏が多いのも尾道の特徴。街のつくりが車中心ではなく人中心なのだ。
 市街では、大型店やファーストフード店、ファミリーレストラン、コンビニをほとんど見かけない。小さな個人事業店が多く、飲食店、中でも喫茶店、カフェの数が他の街よりもずっと多い。
 山の手の方では野良猫をよく見かける。どの猫ものんびりしていて、人慣れしている。これは江ノ島と同じ。人がやさしてくて猫にとっても平和な街なのだ。
 3年振りに山の手を歩いて、空き家になっていた古い民家への居住者が増えただけでなく、センスの良い飲食店が随分増えていることに気付いた。ここ数年、 山の手の空き家再生計画が街ぐるみで進められたことで、若い世代を中心に各地から尾道に人が集まるようになり、街は随分活性化したそうだ。現在の尾道のあ り方は、地方の街活性化のヒント、モデルケースになりうるように感じた。
 街を案内してくれているときの多田は、とても生き生きとして、嬉しそうだった。自分の暮らす街を心から愛し、充実した生活を送っていることがよく伝わってきて、こちらも幸せな気分になった。

 多田は今も、他に仕事を持ちながら、KEIKIというソロネームで、音楽活動をマイペースで続けている。この日のライブもオープニングで彼が30分間、ピアノの弾き語りを聴かせてくれた。
 多田の作る曲はとてもいい。尾道の暮らしの中から生まれたライフサイズミュージックなのだけれど、閉塞感がなく、宇宙に繋がって行くようなスケールの大きさを感じる。妙宣寺本堂の縁側で、夜空の星や月を眺めながら聴くその音楽は、格別だった。

 歩ちゃんと阿部美緒を迎えての妙宣寺ライブは、とても印象深いものになった。この街の風通しの良さが、自分に多くのインスピレーションを与えてくれたようだ。いつもより随分と長いステージになった。
 アンコールの最後はソロで清志郎さんとの共作「胸が痛いよ」を歌う。
 もう1年か。

0 件のコメント:

コメントを投稿