2007年12月29日土曜日

多分18年振り

大阪 martha(dinning cafe+goods)
『リクオのスペシャル忘年会2007』
【ゲスト】島崎智子(P、VO)
 この日のゲストの島崎智子ちゃんのあだ名は“こっちゃん”である。本人から由来を聞くと、智子の子をとって“こっちゃん”になったんだという。へんなの。
 ステージ上で、歌う前に目を閉じて集中を高めるこっちゃんの姿がとても印象に残った。ステージでこういう間を作るのは勇気がいるもんである。
  数秒の静寂が続き、客席が息を飲む中、ゆっくりと目を開けたこっちゃんは、目に見えない何かと交信するかのように歌い始めた。その視線は客席よりもずっと 遠いところにあった。そのうちに聴いてる側もこっちゃんと一緒に目に見えない何かと交信しているような気分になった。そうやってステージと客席がつながっ ていった。

 自分にとっては今年締めのライブ。年末らしい開放感のある楽しいライブになった。本編の最後とアンコールで、マーサの店主で ある片平にカフォンを叩いてもらった。彼とは同じ大学で一緒にバンドを組んでいた仲である。人前で一緒に演奏したのは、多分18年振りくらいだと思う。そ れなりに感慨深いものがあった。とても当たり前のように共演できたことが嬉しい。
 アンコールで1曲歌った後は、番外編として、この日PAをやっ てくれていた関西在住のバンドマン&シンガーソングライター、酒井宏樹と、ライブを観に来ていたSGホネオカのチャツピーシマオカにもステージに上がって 演奏してもらう。若い彼らと、20年後も共演できたらいいなと思う。
 
 今年も結局ライブづくしの一年だった。新しい出会い、再会も多かった。出会いとともに、年々別れも増えてゆく感じ。出会うことがなければ、別れることもない。出会いが多くなるほど、哀しみも増えてゆくのだろう。
 ふと“これ以上、誰かと出会う必要があるのかな”と考えたりもする。別れを悲しむだけでなく、出会えたことの歓び、感謝の気持ちを忘れずにいたいと思う。 

2007年12月28日金曜日

I Got Blues

大阪 martha(dinning cafe+goods)
『リクオのスペシャル忘年会2007』
【ゲスト】AZUMI(G、VO)
 ここ数年、恒例となっているマーサ忘年会ライブ。今年は2days。
 この日のゲズトのAZUMIさんは、自分の中では、“ブルーズマン”という言葉が日本で最も似合う人である。スタイルやジャンルとしてのブルーズではない。音楽に向かう姿勢がブルーズだと感じるのだ。
  AZUMIさんの音楽には、ブルーズという呼び名が生まれた頃に、それらの音楽が持っていたであろうエネルギー、エッセンスがつまっている。それらは、正 義も悪も、ポジティブもネガティブもごちゃまぜになった混沌とした表現である。それらは、割り切れない想い、葛藤、欲望が偽りなく表現された原液のような 音楽である。う~ん、言葉で伝えるのが難しいなあ。
 自分は人のライブを観て泣くことはまずないのだが、AZUMIさんのライブだけは泣けてく る。AZUMIさんの音楽に触れると、自分の感情のベースが“哀しみ”であることを思い出して、おさえていた感情がどっと表に出てきそうになる。そんな感 情を抱えて生きてゆくことはしんどい。けれど、その感情がなければ生きている意味はないようにも思える。
 AZUMIさんのステージを観たのは久しぶりだった。やはり本物だった。自分の感性は間違っていないと確信できた。それが嬉しかった。そして、こういう人がいてくれることが嬉しかった。
 この夜、自分の中にも、ブルーズが存在していた。ちゃらちゃらしつつも、魂に向き合う音楽をやりたいと、あらためて思った。

2007年12月24日月曜日

ロール.オーヴァー.ウンチ!

東京小金井 The Champloo 海風
THE HOBO JUNGLE TOUR 2007
【出演】リクオ(vo&pf.)/山口洋(vo&g.)
 「THE HOBO JUNGLE TOUR 2007」最終日。
 この日は山口のマネージャーのH君の協力のもと、開演前にPAチェックが入念に行われる。その成果があって前日よりもずっといい音に仕上がる。
  この日の山口はリハーサルからえらい気合いの入りようで、本番も最初から飛ばす飛ばす。オレのMCネタ「元気ですよ~!」を連発している姿は、打ち上げで アホになってるときの山口に近かったなあ。お客さんがそんな山口につっこみを入れていたのもよかった。これって、今回のツアーの成果かも。
 ライブはツアー最終日にふさわしい大盛り上がりになった。
 いいツアーだった。山口と音を交わすことで演奏者としての欲がより高まった気がする。
  山口洋は“演奏の間を置く”“音を響かせる”ということに対して、とても自覚的な表現者だ。残念ながら日本にはそういうタイプの演奏者が少ないように思 う。彼の作り出す“響き”と“間”が自分にたくさんのインスピレーションを与えてくれた。毎晩同じ曲を演奏していても、昨日とは違った新しいキャンパスに 絵を描いているような新鮮さがあって、飽きなかった。もっといい絵を描きたいという欲もでた。
 歌もののライブで、これほどまで決めごと少なく、 インタープレイにまかせた演奏をする機会は少ない。そういった演奏を繰り返す中で、“自分がプレイのなかで伝えるべき一番は、歌と楽曲である”という当た り前のことも再認識できた。山口との演奏にはまだその先がある気がする。

 ツアー最終公演場所となった海風は、まるで芝居小屋のようなつくりの沖縄料理屋。ちゃんとステージもあって、ライブも定期的に行われている。料理も美味しかった。スタッフの笑顔も最高。一度来れば、また戻ってきたくなる場所。
 打ち上げも海風でお店のスタッフ等も交えて打ち上がる。最終日ということで、とことん飲む。皆でほんとよく笑ったなあ。そのときに生まれた合い言葉は「ロール.オーヴァー.ウンチ」。ウンチには負けへんぞ~。なんのこっちゃ?それくらい皆アホやってん。
 感謝。

2007年12月23日日曜日

一寸先はハプニング

東京小金井 The Champloo 海風
THE HOBO JUNGLE TOUR 2007
【出演】リクオ(vo&pf.)/山口洋(vo&g.)
ゲスト:小川美潮
  ツアー後半は4連チャンというきついスケジュール。しかもこの日は高岡から東京小金井に移動して本番を向かえるまでの時間が、ほんとタイトだったので、羽 田から東小金井に向かうまでの車中も、山口と2人でゲスト出演してもらう小川美潮さんの曲をi-podで聴いて、構成を頭に叩き込む。
 幸い渋滞 もなく会場に到着するも、リハーサルで音作りに手こずる。時間に追われ、バタバタと余裕のない中で本番。"なんかステージに上がってやっと落ち着いた気が するなあ”などと思いながら、いい感じで演奏してたら、2曲目の途中で山口のギターの音が出なくなる。猪木の言う通り“一寸先はハプニング”やね。このハ プニングをいかに楽しむかである。PAを通さず生音で演奏し始める山口。これが盛り上がった。お客さん得したんちゃうかな。
 小川美潮さんとのセッションは一発勝負の緊張感がとてもいい方向に作用した。期待以上の化学反応。アンコールの「満月の夕」の2番を美潮さんが歌ったのだが、これが素晴らしかった。どっからあんな声がでるんやろう。あれこそ“共鳴”である。天に通ずるような声だった。
 
 明日はツアー最終日。

2007年12月22日土曜日

想いはつながる

高岡 カフェ・ポローニア
THE HOBO JUNGLE TOUR 2007
【出演】リクオ(vo&pf.)/山口洋(vo&g.)  
opening act: Marilyn & Chiyorilyn
 高岡駅前から車で30分近く走っただろうか。ライブ会場であるカフェ.ボローニャは、実にのどかな田園風景の中に存在した。
 この場所でライブ.イベントを企画し続けている渡辺君は、“生活の中に音楽を”“地方都市に音楽を”との想いで、06年にイベントを立ち上げ、自分達が心から聴きたいと思うアーティストにだけ声をかけ、数ヶ月に一度の割合でライブを企画し続けている。
  イベントの度にお客さんからとるアンケートの中で、「この趣旨でこのカフェで聴きたいアーティストは?」という項目に対する回答の第1位がオレだったそう だ。そのことがきっかけになり、渡辺くんがこちらに出演依頼してくれたことで、今回のライブが実現の運びとなった。山口にとって、ここボローニャは既に戻 るべき場所となっていた。過去にボローニャで行われた彼のライブの成功が、このイベントの継続の大きな力になったようだ。
 開演前の店内では、渡辺君とビジョンを共有する多くのボランティア.スタッフが生き生きと動き回っていた。クリスマス前ということでサンタの格好をした女性スタッフが数人。サービスも満点である。
  オープニングで演奏してくれたマリリン(vo.)&チヨリン(pf.)は2人合わせて4人の子供を育てながら、地元で音楽活動を続けているそうだ。お店の 入り口あたりで、彼女達のステージをのぞかせてもらった。そこには心から音楽を楽しむ2人の姿があった。とてもいい雰囲気。
 オレと山口がステージに登場したときは既に、会場が出来上がった状態。オレたちはその流れに乗って、更にエネルギーを循環させていった。理想的なステージになった。
 この田んぼの真ん中で継続されてきた手作りのイベントの持つ力、不在のマスターの想い、集まったお客さんの想い、音楽そのものの素晴らしさ、それらすべてがオレと山口にたくさんの力を与えてくれた。それらの力、想いを感じながら演奏できることは本当に幸せだ。
 想いはつながる。
 ありがとう。
 Keep on!!

2007年12月21日金曜日

12/21 (金) カウンターの中の旅人ー金沢もっきりやにて

金沢 もっきりや
THE HOBO JUNGLE TOUR 2007
【出演】リクオ(vo&pf.)/山口洋(vo&g.)
  二日酔いのふらふら状態で午前9時前に羽田着。出発まで時間があるので空港内のカフェで一服してたら、山口から電話があって、車で空港に向かっているのだ が、渋滞に巻き込まれて時間がやばいとのこと。次の電話で、到着が時間ぎりぎりになりそうだからチェックインと駐車場の場所とりをお願いしたいとのこと。 ほんとぎりぎりの時間に山口が到着。荷物をカウンターに預ける時間もなく、搭乗口まで2人で走る。ぎりぎりセーフ!
 汗かいたあ。お陰で酒が抜けた。
 
 山口はもっきりや初体験。今回のツアーの話がでたとき、ぜひこの場所に彼を連れて来て、マスターの平賀さんと対面させたいと思った。オレにとっての平賀さんは、最高のマスターであり、最高のリスナーである。
  平賀さんはライブ中はいつも、カウンンターの中で立ちっぱなしで、ステージの演奏を聴いていてくれる。ときには目をつむってうなずき、ときには歓声をあ げ、最高の笑顔で惜しみない拍手を送ってくれる。きっと平賀さんは音楽に浸りながら、その瑞々しい感性で遠い世界をさすらっているのだと思う。
 平賀さんは「カウンターの中の旅人」である。

 どちらかというと人見知りの山口が、もっきりやの雰囲気には最初から馴染んでいるように見えた。ステージの上でも、構えたところがなく随分とリラックスしている風。
  この日は、“アーティストとファン”というある種の閉鎖的な関係性から逃れ、“ともに音楽を楽しむ者同士である演奏者とお客さん”という、より開放的な関 係性の中で、その場に集まったすべての人達とともに、いい時間をコーディネイトできた気がする。こういう関係性を築くことは、特にオレたちのようなツアー ミュージシャンにとっては重要だと思う。

 幻想を与えたり、維持することを意識するよりも、それらを壊してしまうくらいステージで自身を 開放させたい。そうやって“自分らしさ”も超えてゆきたい。それが共鳴や共有への第一歩のように思う。臨機応変に、しなやかに共鳴して、毎晩、知らない誰 かと、知らない自分に出会いたい。それが旅の醍醐味やん!

 もっきりやにあるベーゼンドルファーのピアノは、相変わらずだだをこねながらも、よく鳴ってくれた。もっとじっくりと、何日も付き合いたいピアノである。

2007年12月20日木曜日

また飲んでもうた

知り合いに誘われて、下北ラカーニャでほぼ毎週木曜に行われているハンバートハンバートの佐藤良成の弾き語りソロライブを観に行く。
 めずらしくエレキギターでの弾き語り。あんなに声を張り上げる良成をみたのははじめて。彼の回りで起こった出来事、心境の変化がちゃんと音楽に反映されているのだろう。
 2部から遊穂ちゃんも参加。これってまるっきりハンバートハンバートやん。2部の最後に披露された彼らの新曲は凄みがあった。
 自分もまた曲ができそうな気分になった。
 軽く飲んで帰るつもりが、午前2時に五郎(中川五郎)さんが合流してきて、4時過ぎまで飲んでしまう。

2007年12月16日日曜日

音の万華鏡

代々木で学くん(坂田学)のワンマン.ライブを観る。
 音楽、映像、美術がコラボする実験性の高いライブ。音の万華鏡の世界。学くんはドラム以外 にも、歌、ギター、キーボードを披露。2部では彼の歌がメイン。ブライアン.ウィルソンの「Love&Mercy」をカヴァーしたのが特に印象に 残った。ステージだけでなく、客席にもドラムがセットされていて、後半学くんが客席におりて強烈なドラムソロを披露すると、場内は熱狂。有無を言わさぬ説 得力。
 学くんは職人気質とアーティスト気質の両方を兼ね備えた希有な表現者。ソロライブではアーティスト気質全開。我が道を行く姿が頼もしい。ライブを観ていて色んなアイデア、イメージが思い浮かんだ。
 ライブ後はチェロの歩ちゃんと、来年1月末から行う予定のソロアルバムに関する打ち合わせ。このレコーディングには学くんと寺さんにも全面参加してもらうことが決まっている。つまりヘルツのメンバーだった3人がライブに続いてレコーディングでも再集合するのだ。楽しみ。

 寺さん、学くんが参加する1月14日のBYGも要注目でっせ。

2007年12月14日金曜日

さらに遠くへ

12/14(金)福島県いわき市 clubSONICiwaki
THE HOBO JUNGLE TOUR 2007
【出演】リクオ(vo&pf.)/山口洋(vo&g.)
オープニングアクト:あぶらすまし、サカモトトシユキ、猫道楽
 前日のオフに体を休めるどころかさんざん飲んでしまった二人なんである。開演直前まで山口は死人状態。「今日のオレはだめだからMCも全部リクオにまかせた」とか、弱気をことを言う。
 しかし、オレは知っていたんである。彼がソニックのスタッフの想いを受け取っていたこと、オープニングで演奏した地元バンドの奴らの初期衝動に心を動かされていたことを。
 山口はめんどくさいところもあるが、わかりやす男でもある。「リクオは明でオレは暗だ」とか言ってるが、調子に乗ると、奴の方が全然明で、あきれるくらいにアホだったりする。サービス精神も旺盛だ。
 ステージが始まると、エネルギーが会場全体で循環しはじめた。そのエネルギーはステージが進むににつれて大きく膨らみ続けた。熱烈なアンコール。
 アンコール前の舞台袖、「満月の夕」を演奏する前に、山口にまた一つの提案をした。それを彼は受け入れてトライしてくれた。

  オレも山口もまだまだこれから変わってゆくことができる。その変化を成長と呼んでもいいと思う。自分の限界と可能性を感じながらステージに立てるのは幸せ なことだ。完璧な演奏はしていない。ただ今までの限界を超える瞬間が何度も訪れたように思う。もっとよくなる。もっと遠くへ行ける。
 白石のミルトンママ、物販を手伝ってくれたKちゃん等、この日も新しい出会いがあった。難病と闘う22歳のKちゃんは、年末に大きな手術を控えているそうだ。きっと成功する。また元気に再会しよう

2007年12月13日木曜日

ラストワルツでラストワルツ!これで行こう!

 オフの日はやはり温泉なんである。ラストワルツのマリちゃんの車にナビゲートされ、行く先も知らされずに、あたたら山を超え、雪道を走り、たどりついたのが中の沢温泉。
 マリちゃんに案内されたのが、昭和40年代で時代が止まったような古い温泉宿。渓流沿いの露天でほっこり。いいお湯でした。
 その後、猪苗代湖で白鳥をながめ、湖沿いのカフェで皆といろんな話をした。その中で、一つのアイデアが生まれた。

  郡山の駅前界隈、特にラストワルツのあるアーケード街の寂れようは深刻である。オレがこの街を初めて訪れた頃と比べて、人通りがほんとに少なくなった。そ ういう状況でお店をつづけてゆくことがいかに大変か。新潟の話の続きになるけれど、街が廃れば、オレたちが愛するところの音楽も廃れる。
 そこで思いついたのだ。来年、郡山のラストワルツでラストワルツをやろうと。わかる人にはわかるタイトル。つまり、続けてゆくため、繋げてゆくためのお祭りをやろうという話である。
 オレたちは、店主の和泉さんを差し置いて、勝手にこの話で盛り上がってしまった。鉄は熱いうちに打て、である。夜に和泉さんに電話して、話をしたら、ぜひと言ってもらえた。

 マリちゃんのセッティングで、この日は猪苗代湖のそばの温泉付きリゾートホテルに宿泊。夕飯で軽く飲むつもりが、山口と二人でまた深酒。飲みながら激論。熱いなあ、オレら。「リクオは飲み過ぎだ」とオレに説教する山口が、どんどんピッチを上げて飲み続けて酔っぱらい。

2007年12月12日水曜日

シンガー、山口!そしてキンタマ連呼!

THE HOBO JUNGLE TOUR 2007
【出演】リクオ(vo&pf.)/山口洋(vo&g.)
 山口に とっては9年ぶり、オレはなんと今年3度目のラストワルツ。7月にアコパルでラストワルツに来た時に、打ち上げの席で、中川君、奥野君たちと一緒に山口の ことをさんざんネタにさせてもらった。オレは、いつか山口がこの店に戻ってくることを前提にネタにしていたので、今回のタイミングは必然に思えた。
  ラストワルツの看板娘マリちゃんと山口の遭遇もこの日の楽しみの一つだった。詳しくは書けないけれど、この夜の重要なキーワードは「キンタマ」だった。マ リちゃんと山口とオレが打ち上げを終えるまでに「キンタマ」を何回連呼できるか、そこにこの夜のウラの成功がかかっていたんである。
 
  ステージ前に山口に「ギターを弾かずに『Carry on』を歌ってみないか」との無理な提案をしてみた。インタープレイを控え、シンガーに集中して、もとのメロディーを尊重して歌う山口の姿を見てみたかっ たのだ。彼はトライしてくれた。ギターを持たずに歌うのは自分のキャリアの中で初だという。
 両手を後ろに組んで歌う山口は少しぎこちなかった。そのぎこちなさは歌と自分自身に誠実に向き合うことによって生じたものだ。だから美しく感じた。うまさが何かを隠してしまうこともある。これでいいのだ。彼の歌う姿をみて、大切なことに気づかされた。
 曲が後奏にさしかかった頃、山口はギターに手をやろうとした。オレは彼がギターを弾きだす前に、あえて演奏を終わらせた。山口がオレの顔をみて苦笑いした。彼もわかってくれたと思う。「Carry on」は名曲だ。
 この夜の打ち上げの席で、オレたちは何度「キンタマ」を連呼したことであろう。

2007年12月11日火曜日

街に音楽を!

新潟 Gioia Mia (ジョイア.ミーア)
THE HOBO JUNGLE TOUR 2007
【出演】リクオ(vo&pf.)/山口洋(vo&g.)
オープニングアクト:クマガイマコト
 オレは前日、旭川のホテルに携帯電話を置き忘れてしまった。大阪で山口と一緒だったときは、打ち上げ3次会の飲み屋に鞄を置き忘れるし、ほんま相変わらずぼけてますわ。
 で、本日は山口の自家用車で東京からツアー先の新潟へ。オレは免許を持ってないので、運転はもっぱら山口。予想以上に乗り心地が良い。渋滞もないし、カーステの音はいいし、快適な移動。

  オープニングでギターの弾き語りを聴かせてくれたクマガイ君と山口洋との出会いに関しては、HEAT WAVEのサイトにアップされてる山口のダイアリーを読んでください。山口にとっては初のジョイア.ミーア。彼は店主のユウコちゃんの魅力にやられてし まったようだ。人生を積み重ねた人間がかもしだす色気が彼女には備わっている。
 元々イタリアンレストランだったジョイア.ミーアは、今年から本 格的なライブ.ハウスに変身。人通りの減った古町にこういうお店が存在する意味は大きい。オレや山口が愛する音楽の多くはストリート(町や都市の街路、通 り)で育まれてきた。街の活気、そこで生まれる人の繋がりが、音楽を生み出す大きな力になるのだ。
 しかし、現在の日本では、地方の街の活気が急速に失われつつある。郊外に大きなショッピングモールができて、人の流れがそちらに移ってしまい、街から人通りがなくなる、というのがパターン。いわゆるドーナツ化現象というやつである。
 ツアーを続けていると、こういった現実を目の当たりにする機会が多い。危機的な状況だと思う。国の政策に問題があるだけでなく、車社会がより進行したこと、人々が目先の便利に走りすぎることで、自体はどんどん悪化している。問題の根は深い。
 個人事業主のお店が繁栄していないと街は死ぬ。ジョイア.ミーアみたいなお店が街で成り立たないと、新潟の音楽文化はすたれてゆくだろう。
 クマガイ君の声は一度聴いたら忘れられない魅力があった。新潟の人達には彼のような地元のミュージシャンを大切にしてほしい。
 「この街でお祭りをやりたいんです」クマガイ君は、自身にも言い聞かすように、何度もこの言葉を口にした。
  音楽を愛する心、街を愛する心、自分自身を信じる心、共鳴を求める心、それらが出会いを生み、点と点は線につながった。オレも山口もユウコちゃんもクマガイ君も、集まってくれたお客さんも、きっとこの夜、同じ夢を見たんじゃないかと思う。
★2次会移動中。ドカベン銅像の前にて。

2007年12月8日土曜日

奇跡の瞬間

札幌 LIVE&BAR  く う
THE HOBO JUNGLE TOUR 2007
【出演】山口洋(vo&g.)、リクオ(vo&pf.)

  奇跡を信じているのではない。奇跡は起きると知っている。起こすことができる。様々な積み重ねの中で、天とつながる瞬間は訪れる。音楽に取り付かれた人間 はそのことを知っている。だからその瞬間を逃したくない。想いを積み重ね、技術を磨き、力を抜いて、気を集中させて、奇跡を待つ。そして訪れた瞬間に全身 全霊を捧げる。
 ちょっとかっこつけ過ぎた言い方やと思うけど、こういうことを言ってみたくなるくらい、素敵な夜だったのだ。THE HOBO JUNGLE TOUR初日。いろんなものが繋がって、その瞬間は訪れた。
 この夜二人で何曲セッションしたんやろ?10数曲やったかな。実はツアーのためのリハーサルは1日もやらなかった。2人でやる曲もあらかじめきっちりとは決めなかった。当日リハもやらず、ぶっつけでやった曲も数曲。
  でも、準備を怠ったわけではないのだ。オレは、自分がやりたい山口の曲は事前にコード譜面に起こしておいてから、ツアーに望んだ。山口もオレのレパート リーを予習してくれていた。もっと言えば、オレも山口もキャリアを重ねて時間をかけて、奇跡を起こす準備をしてきているのだ。
 いろんな可能性を感じたなあ。まだもっと高みに行ける。いくらでも先がある。そのことを実感した。旅は続く。きっと飽きない。
 くうは最高の空間です。お客さん素晴らしかった。感謝。

  ライブが終わってもスイッチが入ったままで、打ち上げ2次会まで大騒ぎしてしまった。それにしても行きつけのバーのマスター、キヨシさんのDJは、ソウル フラワーの奥野君と同様に、やばい。えらい踊らされました。山口も弾けてたなあ。あの明るさ、アホさ加減は、先月に大阪で会った時とは別人。
 2次会まで参加していた知り合いから「リクオさん、毎日そんなに盛り上がってたら、楽しすぎて死んじゃうんじゃないですか」と言われる。大丈夫、まだ死にましぇん!

2007年12月2日日曜日

エネルギー循環

渋谷 BYG
CRAZY FINGERS(リクオ、Dr.kyOn、YANCY)
 前日の大阪で盛り上がりすぎて、本番直前まで体がだるかったのだが、ステージに上がって、お客さんを前にしたらすぐスイッチが入った。
  クレフィンとしてはBYG初登場。チケットは随分前にソールドアウトで、会場は熱気に満ちていた。いつにましてメリハリの利いた演奏。エンディングのネタ もばっちり決まった。ヤンシーはニコニコしながらイケイケ。“On the beach”のキョンさんのソロ凄かった。BYGとクレフィン合ってるなあ。
 たくさんのエネルギーを受け取りながらのライブ。力まない。空気を読む。感じる。独りよがりにならない。受け取る。流れに乗る。ライブで消耗するんじゃなくて、エネルギーを循環させて元気になれたら理想。
 打ち上げの席では、亀田一家、朝青龍問題などでキョンさん等と激論。疲れを感じない。なんか元気あるなあオレ。うまいこと循環できたのかな。

2007年12月1日土曜日

祝ファンダンゴ20周年!!

大阪十三 ファンダンゴ
ファンダンゴ20周年記念 「男前祭り」
 ~ファンダンゴが誇るピアノマン・リクオが帰って来る!!~
出演:リクオ/有山じゅんじ/石田長生/中川 敬(ソウルフラワーユニオン) 
 ファンダンゴは、十三の猥雑な歓楽街の中にあるファンキーなライブハウス。自分が学生時代からデビューまでの間、ずっとレギュラーで出演し続けていた縁の深いお店である。オープン当初から付き合いのあるお店が20周年を迎えるというのは、やはり感慨深いものがある。
 半年以上前に、当時の店長だったむうちゃんから連絡をもらって、この日の企画を暖めてきた。出演者は皆、自分とも、ファンダンゴにともつながりのあるメンバーばかり。
 87、8年頃、自分は隔週の木曜日にピアノの弾き語りというスタイルでファンダンゴにレギュラー出演していた。まだ弾き語りを初めて1年くらいの頃だったと思う。
 ある日、いつものようにまばらなお客さんの前で弾き語っていたときに、客席後方カウンターの前に見覚えののある人物が立っているのに気づいた。当時ヴォイス&リズムで活躍していた石田長生さんだった。
  その数日前に自分は、京都の磔磔まで友部正人さんと石田さんのジョイントライブを観に行き、ライブの後客席に現れた石田さんに自分のデモテープを手渡して いたのだ。ちなみに、友部さんにもテープを渡すつもりでいたのだが、友部さんからは近寄りがたいオーラが出ていて、話しかけることができなかった。それで 友部さんとの出会いが2、3年遅れてしまった。
 石田さんはオレのデモテープをちゃんと聴いてくいれて、まだ学生で全く無名だったオレのステージをわざわざ観に来てくれたのだ。
  その後、石田さんはすぐにオレをヴォイス&リズムの前座に起用してくれた。お互いプロレス好きということで、プロレス観戦もよく一緒させてもらった。飲み にも連れて行ってもらえば、いつもおごってもらった。「リクオは有山じゅんじに会うべきだ」と言って、有山さんを紹介してくれたのも石田さんだ。石田さん と有山さんとの出会いが自分に与えた影響は大きい。
 ファンダンゴの20周年にこの4人が集まれたことがとても嬉しかった。石田さんと中川君のつ ながりも深い。中川君は今回、有山さんのステージを初めてじっくり観たのだという。「有山さんは素晴らしい」という言葉を彼から聴けたのも嬉しかった。 ファンダンゴのスタッフのつるちゃん、山本さん、豊嶋も元気そうみんな長いね。むうちゃんも昔みたいに踊りながらライブを楽しんでくれた。
 ライブはえらい盛り上がりになった。そこにいた誰もがこの貴重な夜を楽しみ、祝福しあった。
 自分は幸せ者である。
★打ち上げにて。左から有山さん、中川親子、石田さん、オレ。