ボ・ガンボスの体験は強烈だった。当時、自分がまさに影響を受けている最中だったニューオーリンズのガンボ・ミュージックを、彼らは、祝祭感に満ちたロックンロールとして、見事に自分達のオリジナルに昇華していた。
そんな様を見せつけられて、はるか先を越されたような嫉妬を感じつつも、とうとう日本にもこんなバンドが登場したんだという興奮を感じたのを覚えている。関西の土壌から生まれたバンドであったことにも、同じ歴史を共有しているような親しみや希望を感じた。
当時のボ・ガンボスのライブには、しょっちゅう足を運んだ。同じ時期に、山口富士夫さん率いるティア・ドロップスの関西ライブにもよく足を運んでいて、そこにはボ・ガンボス結成直後の、まだ短髪で素朴さを残したキョンさんがピアノでサポート参加していた。
その頃の自分は何者でもなかったけれど、勝手にキョンさんのことをライバル視していた。時には、自分のピアノの方がキョンさんよりもいけてるんじゃないかと勘違いしたこともあったけれど、そんな思いはすぐに打ち砕かれた。ライブに足を運ぶたびに、キョンさんの演奏技術が急速に上がってゆくのを目の当たりにしたからだ。それと同時に見た目や振る舞いもどんどん洗練されて、キョンさんはさらにカッコ良くなっていった。バンドの勢いも見る度に加速する一方だった。
ボ・ガンボスはインディーズながら瞬く間に注目を浴び、自分の認識ではメジャーデビュー前の結成1、2年の頃には、バンドとしての最初のピークを既に迎えていたように思う。今思うと、その存在に影響を受けた者にとって、ボ・ガンボスは、ただの音楽ではなく、態度や姿勢を示す1つのムーブメントだったように感じる。
キョンさんとの出会いの場は、今回の公演場所の1つでもある京都の磔磔だった。ボ・ガンボスから2年程遅れてメジャーデビューした直後の磔磔での自分のワンマンライブに、キョンさんがお客として会場に現れたのだ。
自分は、ライブ中に既にその存在を客席後方に確認していた。キョンさんが自分のことを知ってくれていて、ライブに足を運んでくれたという事実にワクワクした。
ホント、若気の至りなのだが、自分はそのときのライブのアンコールで無茶な行動に出た。
「じゃあ、飛び入りゲストを紹介します。Dr.kyOn!」
なんの打ち合わせも了解もなく、ステージから勝手にキョンさんを紹介してしまったのだ。
名指しされたキョンさんは、客席後方からすくっと立ち上がり、躊躇なく歩を進め、ステージに登場した。目の前にあらわれたキョンさんは、大きくて華があった。でも、威圧感はなかった。
セッション曲には友部正人さんの日本語詞によるボブ・ディランの「I Shall be Released」を選んだ。
キョンさんにはピアノを弾いてもらうことにして、自分はピアノを離れてアコーディオンを抱えた。その場でキョンさんに曲のキーと、原曲よりもずっと速いテンポ、そして2拍目のウラにアクセントを置くセカンドライン調のアレンジを口頭で伝えた。生涯の中でも忘れられないセッションの1つとなった。
その初対面で、キョンさんはオレのすべてを受け入れてくれたような気がした。
デビューから4年程を経て、活動が思うようにいかず相当に煮詰まっていた頃、当時、ボ・ガンボスの解散を発表したばかりのキョンさんに連絡をとり、相談に乗ってもらったことがある。そのときに何の話をしたのかは、もうよく覚えていないけれど、キョンさんが「今、SMAPがいいから聴いてみるといいよ」と言っていたのが、とても印象に残っている。話していて、キョンさんの音楽の嗜好がとても幅広く、さまざまな方向にアンテナをはっているのが伝わった。
相談を受けて、キョンさんはオレのために色んなミュージシャンを集めて、セッションの場をつくってくれた。そのときに始めて共演したのが、今回のツアーにも参加し、長年自分の活動に付き合ってくれているベースの寺さん(寺岡信芳)だ。これまでの自分のステージ、アルバムの中で最も多くのベースを弾いてくれているのは、圧倒的に寺さんだ。
90年代後半からは、キョンさんと一緒に定期的に「PIANOMAN NIGHT」というピアノ奏者が集まるライブイベントを企画するようになった。そのイベントが、「CRAZY FINGERS」の結成につながった。複数のピアノ奏者が打楽器的にピアノを合奏するこのユニットは、自分のこれまでのキャリアの中でも、最もユニークで多いに盛り上がった企画だった。CRAZY FINGERSはライブだけでなく、3枚のアルバムと1枚のDVDを残した。
その後もキョンさんとは、さまざまな場所で、いろんな形で共演を繰り返している。キョンさんには多くの引き出しがあって、共演の度に開ける引き出しが違っていたり、さらに引き出しの数が増えていたりするので、毎回が新鮮で、共演の度に刺激をもらい続けている。
バンドの中でのキョンさんは指揮者のような存在だ。その中で自分は、より自由に泳がせてもらっている感じだ。キョンさんの参加によって、バンドには華やかさとメリハリ、そしてロックのガッツが注入された。
本当は、キョンさんとはHOBO HOUSE BANDで、もっとツアーができたらと思う。それだけに、今回の3公演は貴重で特別だ。色んな意味で、次につなげられたらと思う。
このブログを書きながら、キョンさんが自分のキャリアに与えてくれた影響の大きさを、あらためて感じている。
今では、キョンさんをライバルというのはおこがましい。心から尊敬すべき存在であり、自分の良き理解者だと思っている。
ー2017年1月31日(火)
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★リクオ・アルバム『Hello!Live』発売記念ライブ 〜 Hello!LIVE 2017 〜
【出演】リクオ with HOBO HOUSE BAND
Dr.kyOn(キーボード&ギター)/椎野恭一(ドラム)/寺岡信芳(ベース)/宮下広輔(ペダルスティール)/真城めぐみ(コーラス)
●2/2(木)名古屋 TOKUZO 開場18:30 開演19:30
●2/3(金)京都 磔磔 開場18:00 開演19:00
●2/5(日)東京 Zher the zoo YOYOGI 開場17:00 開演18:00
【全公演メール予約フォーム】
https://goo.gl/forms/z5zOKVcyD61Q9yjT2
ライブ詳細→ http://www.rikuo.net/live-information/
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★リクオwith HOBO HOUSE BAND動画
●「あれから」
●「(what's so funny'bout)peace, love and understanding」
●アルバム告知トレイラー
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■CD「Hello!Live」HR-03¥2800(税抜)15曲入り
■DVD「Hello!Live Movie」HR-04 ¥2800(税抜)21曲入り※ライブ会場限定販売
ー通販ー
タワーレコード・オンライン→ http://tower.jp/item/4406294
Amazon→ http://amzn.asia/f4AEH89
ー配信ー
OTOTOY高音質ハイレゾ配信→ http://ototoy.jp/news/84906
■アルバム特設サイト→ http://www.rikuo.net/hello-live/