10日のGARDEN公演については、ブッキングが決まった時点から、この日をひとまずの総決算にしようとの思いがあった。アルバム制作から始まった流れを、これからも続けていくのかどうか、10日のライブの内容だけでなく、そこに至るまでの現実的な結果を受けて、判断を下さなくちゃいけないとも考えていた。
取りあえず、発売記念スペシャルライブと銘打ったバンドスタイルでの名古屋、大阪、東京3公演を終えてホッとした。特に最終公演の下北沢GARDEN公演では、多く人達との関わりの中で、今までにない場を作り、一歩踏み出したパフォーマンスを展開することができたという手応えがあった。現時点で自分が見せることの出来るベストなステージだったと思う。
集まってくれたお客さん、関係者の皆さんからのダイレクトなリアクションには多いに救われた。確実に何かが変わり始めているし、自分自身が一歩踏み出せたことを実感できた。
Photo by 小山雅嗣
銀次さんからは、まずこのようなありがたい言葉をいただいた。
「ついにやったね。『Hello!』の完成を経て今日エンターテイナーとしてのリクオが確立したと思う」
その後にはこんな言葉が続いた。
「今回のアルバムだけでは期待する結果は出ないかもしれなけれど、あと2枚、がんばってこの方向で作品をつくり続ければ、結果がついてくると思う。ウルフルズだって結構時間がかかったんだよ(銀次さんはブレイク前からプロデューサーとして長くウルフルズに関わり続けていたのだ)」
銀次さんの言葉を受けて、「あと2枚、この感じでアルバムつくるのは大変だなあ」と思いつつも、嬉しくて感激して、少しウルッとしそうになったくらいだ。銀次さんはこの日のライブレポートとアルバム「Hello!」の紹介を自身のFacebookとブログにもアップしてくれていて、その文章にもとても勇気づけられた。
https://www.facebook.com/ginji.ito/posts/959343164185283
http://ameblo.jp/ginji-ito/entry-12171119125.html
Photo by 小山雅嗣
GAERDEN公演と参院選挙を終えて、劇的な状況の変化は起きなかった。けれど今、そのことを悲観してはいない。
参院選挙の結果と戦後4番目の投票率に低さには、やはりがっかりしたけれど、絶望はしなかった。もう少し正確に言うと、表立った結果は絶望的にも思えたけれど、選挙期間前からのさまざまな動きには希望を見いだすことができたし、それらの動きはある一定の成果をもたらした気がしている。そういった動きが各地で繋がり、一気にではなく次第にひろがってゆけばいいのではと思う。
自分は元々、極端な変化や革命を求めない保守的な一面を持った人間で、特に社会情勢において、劇的な状況の変化は、危険を伴うという意識が強いのだ。
少し一息ついてみて、アルバムをリリースしてからの自分は、結果を早急に求めて焦り過ぎていたのかなと思う。
7月10日のガーデン公演の後に、色々と判断を下そうと考えていたのだけれど、ライブを終え、これまでの状況を受けての自分の気持ちは、想像していたものとは違っていた。
今回のアルバム「Hello!」は、曲作りの段階から、聴いてくれた人達が歌に自身を重ね合わせてくれることを意識していたのだけれど、完成してみたら、パーソナルな要素も強く含んだ作品になっていた。アルバムを貫く「再生」というテーマは、自分自身のテーマでもあった。ポップで開かれた作品を作ろうと目指していたら、今の自分を投影した正直な内容になった気がする。
こういう作品をつくる事ができて、今自分がこういう形で活動を続けていられるのは、関わってくれるミュージシャンとスタッフ、応援してくれるお客さん、地方を含めた関係者の皆さんの存在があってこそだ。
自分は人と関わることが好きなんだなと思う。元々好きと言うよりは、音楽活動を積み重ねることで、孤独な作業を経て、人と関わり合い、互いを生かし合い、何かを生み出すプロセスにやりがいを感じるようになったのだ。
50歳を過ぎてからでも、面倒を引き受けて、色んな人達とのかかわり合いを続けながら、ともにときめき、いい夢を共有したいと思う。
だんだんよくしていこう。自分自身も、自分を取り巻く世界も。すべては繋がっている。
みなさん、これからもよろしくです。
ー2012年7月27日(水)
Photo by 小山琢也