出演者はノーギャラのかわりに、手の込んだ料理が振舞われ、酒は飲み放題である。オレはこのパー ティーを通して、飲みながら演奏することの楽しさを知った。出演者も客も飲みながら参加するのがこのパーティーの暗黙の大前提なのだ。ここでの自分の演奏 は、いつも以上に危うく、開放的で、ワイルドだ。客の乗りも砕けていてよい。お客と出演者の境界線が他のイヴェントに比べて、かなり曖昧。
イ ヴェントのスタートは夜の9時を回ってから。1部はDJプレイをはさんで、3組のプロのミュージシャンによるそれぞれ30分程のライブ演奏。2部からはプ ロの卵の演奏が中心で、飛び入り演奏もありになる。朝方になれば、出演者入り乱れてのセッションタイムが通例。イヴェントの終了時間はきっちり決まってお らず、取りあえず始発以降、お客と出演者とスタッフの体力、気力が果てた時点でお開きとなる。この長い宴を晴夫さんは毎回、飲みながら、セッションしつ つ、司会進行も努め、最後まで取り仕切るのだから頭が下がる。
「サロン東京的」最終回の出演者は、いつも以上に多種多様であった。黒装束の女性 による厳かなテルミン演奏、晴夫さんのギター伴奏による女性ダンサーのストリップショー、一見おたく風男性によるギターのパンク弾き語り、背広姿の親父サ ラリーマンによるピアノのブルース弾き語り、大柄の白人女性によるボサノヴァのアカペラ等々、つまりなんでもありなのだ。オレはソロでのピアノ弾き語り以 外に、美輪明広の流れを受け継ぐシャンソン界期待の新生ソワレと一緒に「ケサラ」を熱唱。ソワレとは久し振りの再会。何か吹っ切れた感じで、すっかり女性 らしくなっていた(注:体は男)。最近は歌手活動の他に、新宿のゴ-ルデン街で飲み屋のオーナーをしているそう。
Lの店長の横山さんとオーナーの遠山さん、そして晴夫さんは、若い頃から西麻布界隈の酒場を遊び場にしていた。彼らはストリートと酒場と音楽の関係をこよなく愛している。きっとまた時期をみて、いかがわしいパーティーを再開させてくれるだろう。
★Lのオーナーがオレに飲ませてくれた高いシャンパン。