自分にとって師匠と呼べる存在を敢えて一人あげるとすれば、有山じゅんじさん以外に思い浮かばない。有山さん自身は弟子をとるようなタイプではなく、何かを直接指導してもらった記憶もないけれど、その背中からは実に多くを学ばせもらった。
出会ったばかりの頃、大学を卒業したばかりの何者でもない無名の若者である自分を、有山さんはツアーに誘ってくれた。今思えば、すごい抜擢だと思う。
有山さんからはこんな言い方で声掛けしてもらった。
「リクオ、今度ツアーに出るんやけど、一人でツアー回るの寂しいから、ついてきてくれへん?」
相手にプレッシャーを与えないこれ以上の言葉を他に聞いたことがない。
自分はサポートミュージシャンとしてツアーに参加するつもりでいたのだけれど、有山さんは各ライブでオレが歌うコーナーもしっかりと用意してくれて、有山さん名義のライブにも関わらず、実質、そのツアーは2人のデュオライブのような内容のステージになった。キャリアや世代に関係なく、対等にオープンに共に音楽を楽しもうとする有山さんの姿勢は、当時も今も変わらない。
それ以降有山さんから頻繁にツアーに誘ってもらうようになった。'90年代前半までは、2人だけでなく上田正樹さんも加わった3人で地方を回らせてもらう機会も多かった(時々そこにヴァイオリンのHONZIが加わることもあった)。
まだCDデビューする前から、有山さんの運転する車で、さまざまな町へ連れて行ってもらった体験は、その後の自分のツアー生活の原点となった。とにかく、有山さんとのツアーは、オンステージ、オフステージ含めて楽しい思い出しかない。
来年に還暦イヤーを迎えるにあたり何をしようかと考えた時に、70歳を過ぎて現役バリバリの有山さんとのツアーを思いついた。
初めて2人でツアーに出てから35年の時を経て、今も現在進行形の2人が久し振りに各地を回ることを想像してワクワクした。ツアーを企画するにあたっては、有山さんに恩返ししたい思いもあったけれど(当時「いつかリクオがオレをツアーの誘ってくれよ」と有山さんから言われていたのだ)、この文章を書き連ねるうちに、むしろこのツアーは自分へのご褒美だと思い返した。35年後にまた有山さんと2人でツアーに出れるなんて、当時の自分には想像できない未来だった。続けてきてよかったなと思う。
各地でお待ちしてます。
『有山とリクオのぐるぐるツアー 〜リクオ還暦イヤー記念』
●1/4(木)大阪市・BIGCAT 新春!南吠える!!(1/3~5開催)
「今宵はリクオと二人で、ありやまな夜だ!」
●1/7(日)和歌山・オールドタイム
●1/8(月祝)和歌山白浜・甲羅館 オープニングアクト:メトロロ
●1/24(水)京都市・磔磔
●2/2(金)愛知県豊橋市・HOUSE of CRAZY
●2/3(土)下北沢・ラ・カーニャ
●2/4(日)三重県松阪市・M'AXA(マクサ)
※後日、追加ツアー情報告知