沖縄民謡歌手の古謝美佐子さんが、6日(日)にSEALDsらが主催した日比谷野音の集会に参加して、辺野古基地移設に反対するスピーチをしたことを知って、さまざまな思いが巡った。
以前、古謝さんとイベントでご一緒させてもらった時の打ち上げの席で、米軍基地辺野古移設が話題になった。正直、打ち上げの場で、こんなナイーブな問題をウチナーの古謝さんが正面向いて話してくれるとは思わなかった。その話題の中で、古謝さんは自分の生い立ちを話して聞かせてくれた。
「両親は米軍嘉手納基地で働きながら自分を育ててくれた。父親は、自分が幼い頃に、基地内の事故で亡くなった(アメリカ軍の車両にひかれて亡くなられたそう)。けれど、自分には基地に育てられたという思いもある。日本に存在する米軍基地の70%が沖縄に集中しているのはおかしいことだと思うし、辺野古への基地移設も反対だけれど、基地で働いていた地元の人達とのつながりもあり、そういった人達の気持ちを気遣うと、自分が声を上げて辺野古移設に反対することには躊躇がある」そんな内容の話だったと記憶している。
古謝さんが、辺野古基地移設反対の意志を公に表明し行動するようになったのは、最近のことだ。自分が声を上げることで誰かを傷つけることも覚悟した上での、さまざまな葛藤を経ての行動だと想像する。古謝さんの思いのすべてを知ることはできないけれど、その葛藤を想像することが、この問題を自分の問題としてとらえることにつながってゆく気がしている。
古謝さんを中心として結成された沖縄民謡女性4人グループ「うないぐみ」と坂本龍一氏のコラボレーションで10月にリリースされた曲「弥勒世果報 (みるくゆがふ) - undercooled」には、古謝さんの思いが凝縮されているように感じる。 https://www.youtube.com/watch?v=JUDG_LSSyZ8 自分が知る今年リリースされた中で最も心揺さぶられた歌の一つだ。
自分も運営に関わっていた「海さくらミュージックフェスティバル」という江ノ島の展望台で開催されていた野外フェスに古謝さんに参加してもらったときのこと。
古謝さんの歌は、すべてを包み込むような包容力で天高く響き渡り、神がかっていた。ステージが始まってしばらくすると、不思議なことに、たくさんの鳶が古謝さんの頭上高くに集まり、中空で旋回を始めた。その数はどんんどん増え続け、旋回は古謝さんのステージが終わるまで続いた。忘れられない光景、体験だった。
古謝さんの歌は天と地と人を繋ぐ。天と地、自然との繋がりがなければ人間は生きてゆけない。人も自然の一部であり、人だけの繋がりだけでは生きてゆけないのだ。古謝さんの歌は、そんな当たり前のはずのことを思い出させ、感じさせてくれる。
辺野古の基地移設は日本の安全保障や沖縄の植民地的なあり方だけが問題ではない。人が自然の一部として、どう繋がり合って生きてゆくべきなのかも問われている。「弥勒世果報 (みるくゆがふ) - undercooled」という歌には、そんな問いかけと祈りが込められていると感じる。
ー2015年 12月8日(火)