2020年6月22日月曜日

「通常」にして「特別」な夜 ー 観客ありライブ再開

和歌山・オールドタイムにて、久しぶりの観客ありライブ。
ライブ再開の1回目、ソーシャルディスタンスを心がけての通常とは違うライブということで、少しの不安を抱えながらのライブ当日。
JRに乗るのは3カ月ぶり。車内は普段より空いていて、京都から和歌山までの移動がいつもより長く感じられた。

ちょっと気構えてオールドタイムのお店のドアを開けたのだけれど、マスターの松本さんと音響の中谷君が、ごく普段通りに迎え入れてくれたので、拍子抜けした。
長年通い続けた、いつものオールドタイムと変わらない風景。リハーサルが始まったら気負いが薄れていった。

ライブに、やりにくさや違和感はほとんど感じなかった。それどころか、これまでのオールドタイムの中でも、特別に会場の熱量が高いライブになった。
ソーシャルデシスタンスが、余計に、会場の一体感を高める効果をもたらした気がする。制約があるからこそ、会場の「思い」がより強まった。
この状況の中で、ライブを楽しみに待っていてくれる人達がいることが本当に嬉しく、ありがたかった。

ライブは毎回毎回が「特別」なんだと、あらためて思った。場を受け入れ、その日その場所だからこそのライブを目指すのが自分の信条。そういう意味では、昨夜のライブも「通常」だという逆説が成り立った。
配信ライブでの「気づき」や、これまでの様々なシチュエーションでのライブ体験が、昨夜のライブにも生きた気がする。

オールドタイムは、この先もライブスケジュールが埋まっておらず、通常営業に戻る見通しが立っていない。マスターの松本さんは、このコロナ禍でたくさんの負債を抱え、とっくに申請済みの持続化給付金もいまだに振り込まれない苦しい状況の最中。
それでも、松本さんは、このコロナ禍での気づきや、これらからについて語り、自分の前では、明るく前向きな振る舞いを崩すことがなかった。



自分達ツアー・ミュージシャンはこういう人達に支えられて、成り立ってきた。
地べたと繋がるこのライブ文化を、これからも皆と一緒に守ってゆきたいと思う。自分達が支えようという意思を持たなければ、この文化は廃れてしまうだろう。

「通常」にして「特別」な夜だった。
ライブハウス最高!
ー 2020年6月22日(火)

〈リクオ・観客ありライブ・スケジュール〉
「リクオ&ピアノ 2020」
●7/5(日)名古屋市・オープンハウス 
前売¥3500 開演18:00 限定30名(要予約)
メール予約(0時より):info@openhouse-imaike.com
電話予約(17時より):052-753-4300(オープンハウス)

●7/10(金)長野県駒ヶ根・G-Studio NIRVASH
オープニングアクト:TERRY
前売/予約¥3,000 開演t19:30 限定20名
メール予約:info@nirvash-kmg.com
(問)090-3406-0329

●7/11(土)京都・拾得 tel 075-841-1691
前¥3500 開演18:30 限定25人(要予約) 
メール予約:http://www2.odn.ne.jp/jittoku/yoyaku.htm

●7/21(火) 四日市市・VEEJAY tel 059-351-7440
前売り¥3500 開演20:00
ご予約&問い合わせ
veejay 059-351-7440 090-3381-7139

ライブ詳細:http://www.rikuo.net/live-information/

〈リクオ・オンライン配信ライブ・スケジュール〉
●6月25日(木)[Piano Singers]
出演:リクオ / 伊東ミキオ / 椎名純平
会場:吉祥寺・スターパインズカフェ (STAR PINE'S CAFE)
配信開始:20:00(開場19:30) チケット代:¥2500
購入および詳細:https://tiget.net/events/93175

2020年6月8日月曜日

気落ちからの回復 ー ライブの再開について

7月以降に予定していたツアーが軒並み正式に中止になったことで、ここ数日、思いのほか気落ちしている自分に気づいた。

例えば、地方ツアーが4ヶ所組まれていた場合、その内1ヶ所のお店が開催を希望していても、その他の公演が中止になれば、交通宿泊費、3蜜を避けた限定人数での開催状況を考えると、1公演だけでは収益が成り立たず、ツアー全体を中止にせざるを得なくなる。

お店や主催側が、ライブ再開に慎重になるのは十分に理解できるし、それぞれの選択を尊重すべきたと思いつつも、開催の可能性をギリギリまで探り続けながらの、ここへきての中止の連続は、少々こたえた。
コロナの影響で、9月以降はブッキング自体が思うように進まない状況なので、いつになったら通常のライブを始められるのだろうという不安も大きくなり始めている。

このコロナ禍で収入を断たれ、バイトや別の仕事を始める音楽関係者も多い中、部屋にこもることを許されている自分は、まだ恵まれていると思うけれど、この状況がこれからも長く続くようだと、そうも言ってられなくなる。

実のところ、2ヶ月半続いている部屋ごもりは、思っていたよりストレスフルで新鮮だった。ツアーに出れなくても、配信やDVD制作などやることも結構あって、それなりに充実した日々を過ごすことができている。自分の活動について、色々と考え直す機会を得られたことも良かった。

正直に言えば、ツアーに比べて体力と緊張感を必要としないこの暮らしは楽だった。部屋ごもりを続ける中で、ツアー中心の暮らしが結構タフな日々であったと感じるようになった。20数年間、休むことなくよくやってこれたなと思う。
お陰で、体のメンテナンスができたことは、ここ数ヶ月の収穫の一つではあるけれど、今急に「明日からツアーに戻れますよ」と言われても、すぐには心と体がついてゆけない気がする。
それゆえ、ツアー生活復活に向け自分なりに心身の準備を整え始めていたので、まだしばらくはツアーに出れそうにないことがわかって、ふっと力が抜けてしまった。

とは言え、どこかで折り合いをつけて、ケースバイケースで徐々にでもライブを再開してゆかないと、このままだとライブ文化そのものが廃れてゆくんじゃないかとの危機感がさらに増している。人々の「繋がり」や「文化」「創作」の場を奪ってゆく新型コロナウイルスの厄介さを、今更ながら感じている。

現時点での結論としては、ツアーでの遠出はもう少し待って、関西、東海地区を中心に、ガイドラインに沿って3蜜を避けたソロライブを少しづつでも再開してゆこうと考えている。無謀なことは避けるけれど、やってみないとわからないこと、前に進まないことも多い手探りの状況。
「少しづつ」という姿勢を大切に、焦らずやってゆこうと思う。数日内には、新たなライブの告知を始めるつもりだ。

最近、ツアーミュージシャン含めたライブ関係者の間に、絶望感からくる気力低下が蔓延し始めているのを感じる。先の見通しが立ちづらいことで、今年一杯どころか、あと数年間は通常ライブの開催は難しいだろうと考える人もいて、さすがにそれは悲観し過ぎではと思いつつ、その考えを完全否定することもできない。
振り回されて一喜一憂するよりも、悲観に安住した方が、精神的にはむしろ楽な面がある。けれど、その安住は自分の気力を奪ってゆく。

悲観的になり始めたら、1人で考え込むのをやめて、知り合いと連絡を取り合い、話をする時間を意識的に持つのがいいと思う。自分は、そのことで結構救われている。
愚痴を言い合ったりする中で、何となく気持ちが晴れていたり、人と話すことで、視野が広がって、前向きなアイデアが浮かんだりもする。

通常のライブができないのであれば、今までとは違うライブのあり方、創作のあり方、文化のあり方を、探ってゆこうと思う。自分はオンラインの配信ライブにも、その手がかりのようなものを見つけた気がしている。
配信ライブへのトライは、自分のライブに対する認識を確認し、さらに広げてくれる、とても良い機会を与えてくれた。ライブをつかさどる要素は多様で、自分の意識を変えてゆけば、いろんな形での一期一会が成り立つのだと思う。
この時期に、自分よりもずっと若い仲間とともに、アイデアを出し合いながら一つの目的に向かうことができるのはありがたい。

今は現実に向き合いながら、試行錯誤を楽しみたいと思う。闇の中にこそ希望があるはずだ。そのことをさまざまな繋がりの中で証明してゆきたい。

ありがたいことに、今日は数本のライブ開催が決定した。長年の付き合いのお店のマスターと電話で話して、いいエネルギー交換ができたのも嬉しかった。
そうすると、またムクムクと気力が湧いてきて、周りの景色まで違って見え始める。自分の単純さに呆れつつ、こういう性格で良かったなとも思う。


振り返れば、ツアーに出れなくなったこの数ヶ月の間も、自分は常に音楽に救われてきた。朝起きてすぐに好きな曲を流せば、それだけで心に精気が宿り始めるのを感じる。プレイヤーではなくリスナーとしてのを時間をたくさんつくれたことも、この部屋ごもり期間の収穫の一つだ。
今はインプットしてゆく時間で、それが曲などの形になってゆくには、もうしばらく時間がかかるかも知れないけれど、焦らず、その時を待ちたいと思う。

こういう時期だからこそ、音楽には経済を埋める以外の役割があるはずだ。その役割に自分も加われたらと思う。

ー 2020年 6月8日(月)

〈リクオ・オンライン配信ライブ・スケジュール〉

■6月14日(日)磔磔 presents スペシャル配信ライブ 『リクオ × 竹原ピストル』
配信開始:17:30
チケット代:¥3000
配信チケットのご購入および詳細
https://twitcasting.tv/kyoto_takutaku/shopcart/8184



■6月25日(木)[Piano Singers]
出演:リクオ / 伊東ミキオ / 椎名純平
会場:吉祥寺・スターパインズカフェ (STAR PINE'S CAFE)
配信開始:20:00(開場19:30)
チケット代:¥2500
販売:https://tiget.net/events/93175



2020年6月2日火曜日

配信の可能性と酒場ライブの意味

昨日は、自分が暮らす京都一乗寺からの2度目の配信ライブ。
セッティング、カメラアングル、照明、マイキング、音響等、スタッフのみんなとアイデアを出し合い、配信ライブならではのライブのあり方に、こだわれるだけこだわった。結果、空気感の伝わる音響と、映画を観るような美しい絵を届けることができたんじゃないかと思う。




配信の会場となったインキョカフェは、一乗寺に越して以来通い続け、お世話になっているミュージック・バー。
マスターの院去君は、ブルースを中心としたルーツミュージックをこよなく愛するナイスガイ。店のカウンター席は常に音楽好きの常連さんに占められていて、オレもその中の1人。
数ヶ月前では、このカウンター席で深夜まで、音楽とお酒と会話を楽しむのが、自分のこの街での大切な日常の一部だった。

酔いがまわって気分が良くなると、カウンター席を離れて、お店のアップライトピアノを千鳥指で弾きだすこともしばしばで、今回の配信ライブでは、そんな深夜の酔鍵ライブを再現したいと思った。
選曲も、インキョカフェのカウンターで聴いた曲や、お店に合いそうなブルージィーな曲を意識して、普段の弾き語りよりピアノ演奏をフィーチャーすることにした。

1部で演奏した「アフリカの月」は、3日前の深夜、インキョカフェで院去君と2人で歌った曲だし、2部で演奏したインスト曲、オスカー・ピーターソンの「自由への賛歌」は、先週、インキョカフェのカウンター席で、深夜3時に院去君と2人でしみじみと聴き入った曲だ。



自分の経験では、配信ライブは、演者もスタッフも普段のライブ以上に失敗が許されない一発勝負の緊張感を強いられる。けれど、今回のステージでは敢えて、その緊張感を伝えるよりも、くだけた適当さや、どうしようもない自分を受け入れるようなパフォーマンスを意識した。それが、自分にとって酒場で配信ライブをやる意味の一つでもあった。

個人的には、この状況下で、起きる出来事に真面目に向き合うことで、気持ちが硬直して、自分の多面性を自分で閉じてしまっているような心苦しさを感じていたので、もっと適当に自分を解放したい思いが強くなり始めていた時期だった。今回のステージには、そういう精神状態も色濃く反映されていた思う。

配信ライブに向き合うようになって以来、「いつ、どこで、どんな状況下で演奏するのか」をより強く意識するようになった。このコロナ禍に、一期一会のライブの新しい可能性に挑戦できる意味は大きい。通常のライブが可能になっても、新しい表現の場として配信ライブを活用していきたいと思う。
今の気持ちを忘れずにいれたら、ツアー生活に戻れた時にも、今まで以上に、一つ一つのライブを特別な場として、より新鮮な気持ちでステージに臨むことができるんじゃないかと思う。



前回に続き、リハーサルからリモート参加して、音響に関する的確なアドヴァイスをくれた上に、本番ではチャットにも参加して配信ライブを盛り上げてくれたソウル・フラワー・ユニオンの中川敬君にも、心から感謝したい。
彼は今や、一乗寺からの配信ライブには欠かせない存在。中川君の次回一乗寺配信ライブはノルウェジャンウッド改めオブリ(OBBLi)にて6月20日(日)に決定。

オレの次回の配信ライブは、京都の老舗ライブハウス・磔磔にて、竹原ピストル君とのジョイントライブが6月14日(日)に決定。磔磔は学生時代からお世話になり、デビュー前にはアルバイトもさせてもらっていた縁の深い場所。
まだ通常のライブに戻れる目処が立っていない磔磔にとっても新たな一歩となる大切な配信ライブなので、責任を感じる。次のステージに向けて、張り合いのある日々を過ごせることがホントありがたい。
もちろんピストル君と2人でのセッション曲も色々考えてます。
配信チームは、一乗寺ライブと同じスタッフが担当。配信ならではの、普段の磔磔では観れないライブをお届けします。
視聴参加、よろしくお願いします。

■磔磔 presents スペシャル配信ライブ 『リクオ × 竹原ピストル』
配信チケットのご購入および詳細
https://twitcasting.tv/kyoto_takutaku/shopcart/8184



5月31日(日)インキョカフェからの配信動画は、6月14日(日)までのアーカイブ録画視聴、その間の購入も可能です。よろしくお願いします。
https://twitcasting.tv/c:dop2020/shopcart/6267

全国の皆さんの、たくさんの視聴とコメントに、とても勇気づけられ、感謝してます。
ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

ー2020年6月1日(月)