桜並木の続く川沿いの通りで自転車を止め、短い花見をすませた後、喫茶店に入り、このブログを更新している。今日の藤沢は風が強く、8分咲きの桜の花もはらはらと散り始めていた。
桜の季節を迎えると心が不安定になりがちだったのが、近年はそうでもなくなった。桜が満開になり散ってゆく過程で、今も感傷的な気分にはなるけれど、それで心のバランスが崩れて鬱々とするようなことはなくなった。
この時期に忙しくすることが多くなって、不安定になる余裕がなくなってしまったのかもしれない。或は自分の感性がにぶってしまったのだろうか。そう言えば、この時期ひどかった花粉症もほとんど治ってしまった。
自意識過剰で過敏だった若い頃と比べれば、今は心が安定している。涙腺は緩くなったけれど、気持ちを引きずる事が少なくなった。自分のことばかり考えていたあの頃よりは、色んな意味で生きやすくなった。
割り切れない気持ちがなくなったわけではないけれど、その思いを心のどこかに置いたままバランスをとって生きてゆく術に長けてきた気がする。体験の積み重ねが、自分を以前よりもタフにしたことも確かだろう。
こういうことを書いていると、なんとなく寂しいような気持ちにもなる。
タフになるということは(あくまでも当時に比べれば)、ある種の感受性を鈍らせるということかもしれない。あの頃に戻りたいわけではないけれど、あの思いを失なってしまうことに対する寂しさがどこかにあるのだろう。
ただ、若い頃の自分は過敏ではあったけれど、他者に対しては今よりも鈍感で、今以上に平気で相手を傷つけた。で、それが結局ブーメランになって自分に返ってきた。もう、そんな頃に戻りたいとは思わないし、そもそもどんな時代にも戻りたいとは思わない。生まれ変わりたいという欲求も希薄だ。めんどくさいと感じる。一生一度でいいかなと。そう考えた方が、日々を大切に生きてゆけるような気もする。
ツアー先の弘前で聞いた「はかめく」という方言にインスパイアされて、’06年に「はかめき」https://www.youtube.com/watch?v=72MnBTIxMXo&feature=youtu.beという桜ソングを書いた。自分の中で大切な曲の1つではあったけれど、ライブのレパートリーとして定番になることはなかった。それが、なぜか’11年の東日本大震災以降、お客さんや知人からこの曲をリクエストされたり好きだと言われる機会が増えた。特に被災地の知人からそう言われる機会が多くて、理由がよくわからず不思議に思っていたのだけれど、昨年末にリリースしたライブ盤「リクオ with HOBO HOUSE BAND LIVE at 伝承ホール」に「はかめき」を収録するにあたり、何度もこの曲を繰り返し聴き、リリースを受けてライブでも演奏する機会が増える中で、その理由がなんとなく自分なりにわかるような気がしはじめた。
心の柔らかい部分を失わずにいるということは「痛み」をともなう。その過去がつらいのは、その相手や場所や出来事に強い「思い入れ」が存在したからだ。その過去を忘れてしまうことは、その相手や場所や出来事を心の中から消し去ることだ。
たとえ「痛み」をともなっても失いたくない記憶がある。そして、「痛み」をともなっても忘れちゃいけない過去もあるはずだ。最近は、立ち止まり振り返ることの大切さを感じている。
なんだか考えがまとまらぬままに書き綴ってしまった。やはり桜の季節のせいかもしれない。
ー2015年4月2日(木)
【告知です】今週末4月5日(日)下北沢GARDEN 公演を皮切りに、自分がコーディネイトする毎年恒例のコラボセッションイベント『HOBO CONNECTION 2015』が、今年も日本各地で9公演開催されます。最近は、レコーディングと平行して日々イベントの準備に追われています。「一期一会」という言葉がこれほどふさわしいイベントは他にないと自負しています。 初日5日(日)下北沢GARDENでは、チャボさん、金子マリさん、奇妙礼太郎とセッションしまくります。ベースは寺さん、ドラムの椎野さん。ぜひ観に来て下さい。
web site http://www.rikuo.net/hoboconnection/
FB page https://www.facebook.com/HOBOCONNECTION/
最近、BARKSに掲載されインタビューで「HOBO CONNECTION」について語っています。イベントの趣旨や意義が伝わる内容です。
http://www.barks.jp/news/?id=1000113784