この日共演する外村はこのお店のマスターで学生時代からの音楽仲間。
学生時代に彼といっしょにはじめたロック.バンドが俺の音楽キャリアの一つの 出発点になった。当時は彼が歌とギターで、俺はキーボードのみを担当してい
た。出会ったその日に彼が貸してくれたドクター・ジョンのアルバム「ガンボ」 がその後の俺のピアノスタイルに多大な影響を与えた。それから彼の6畳間の
下宿に通 いつめ、いい音楽をたくさん教えてもらった。 卒業後、外村は俺より先に上京して音楽キャリアを重ねた。そしてヴィヴィッド からソロアルバムをリリース。そこではデビュー前のつたない俺のプレイも聴
くことが出来る。
紆余曲折あって、結婚し、子供も生まれて2年前に彼は故郷の伊勢に店を構え た。
カップジュビーには街の音楽好きやくせのあるちょっとした変わり物が集まって くるようだ。外村は10代の若いバンドボーイ達からも慕われている様子。彼等
はコーヒー一杯で旅人気分を味わうためにカップジュビーに集まってくるのかも しれない。俺が外村の下宿に通ったように。 この日は他にも思わぬ再会が。
大学時代に俺と外村が所属していた軽音楽部の先輩、現在大阪在住のM さんが ひょっこりお店に顔を出したのだ。俺の方は昨年Mさんと10数年振りの再会を
果たしていたのだが、外村の方はMさんが卒業して以来の再会。 Mさんがこの日現われた理由はよく知らないけれど、何かを確かめに来たんやろ な。
久し振りに外村の歌を聴いた。ブルースに憧れていた少年がブルーにこんがった りしながら時を経て、憧れじゃないブルースをこの街からマイペースで歌ってい
た。 色々あるんやろうけれど奴も嫁さんも子供も元気そうだった。 またの再会を約束して次の街へ。
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