日中は茶店で時間を過ごす。
なかなか寝つけず、布団にはいりながら、「スタインウェイ戦争」という新書を読み始める。クレイジーフィンガーズのレコーディングでお世話になった高木クラヴィアの代表、ピアノ・チューナーの高木裕さんの半生を描いた内容で、相当に面白くて、結局朝までかけて読み切る。
自分が秩父でライブをやるときに、お世話になっている鈴木さんが努めているミューズパークという会館に、ニューヨーク・スタインウェイを入れて、ずっと保守点検をやっているのが高木さんであることを、この本を通じて初めて知る。こういうつながりがあると嬉しくなる。
自分が高木クラヴィアを最初に訪ねた時に、1台のスタインウェイ・ピアノを試奏させてもらった。その音色とタッチは自分がそれまで出会ったどのピアノに
も感じたことのない特別なものだった。自分が今まで出会った中で最高のピアノだった。本書にはそのスタインウェイについて書かれた下りがあった。
そのピアノは100年以上前にニューヨークで作られ、カーネギーホールで使用されていたものが、日本に持ち込まれ、あるホテルが所有した後は行方がわからなくなっていたそうだ。
クラッシックピアノの巨匠ホロビッツが1986年に来日した際、そのスタインウェイを所有していたホテル側が、ホロビッツとスタインウェイの対面をセッティングする。ホロビッツはたちまちそのピアノに惚れ込んだそうだ。
古いニューヨーク・スタインウェイの音に惚れ込んでいた高木さんは、その「ホロビッツが恋に落ちたピアノ」を長年探し続けていた。そして、ついに2年
前、アンティークを扱う輸入業者から、そのピアノを購入する。話はそこで終わらず、その後高木さんは、そのピアノをニューヨークのカーネギーホールに持ち
込んでのレコーディングを実現させてしまう。すごい情熱。
自分が弾いたピアノがそういう背景を持っていたとは知らなかった。やはり、あれはすごいピアノだったのだ。本を読み切った後も、なかなか余韻がさめず、「ホロビッツが恋に落ちたスタインウェイ」にもう一度会いに行きたくなる。
※「スタインウェイ戦争」は洋泉社から新書で出てるので、ぜひ皆さんも読んでみて下さい。
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